第13話◯時計職人2◯

寮に戻った夜

僕は、ルームメイトを誘った。

「少し、話をしないか?」


僕は、彼に、ヒントの紙を見せた。

彼は黙って、それを手に取り、じっくり読んだ。

「今日は、工作の授業があったんだ」

僕は、僕がヒントを理解した経緯を説明しようとした。

そして、花咲宮と知り合ったことを告げた。


銀時計の態度と、花咲宮の去り際の態度に、同じ何かを感じたのだと、訴えた。


ルームメイトは、今まで見たことの無いような、高揚した表情に変わり、「そんなところに居たのか!見つけた!」と、強い口調で呟くと、僕の手を握り、「お手柄だよ、アキラ、ありがとう!」と叫んだ。


そして、僕とは、別の細工の、丸い、真珠で覆われた形の探知箱を、持ってきた。

「開けてみな。」

僕は、オルゴールでも開けるかのように、蓋を開けた。


そこには、淑女が繋がれていた。


「僕の母だよ。」

「助け出すのに、時計職人の力がいるんだ。」

短い告白だった。


花咲宮は、親が光表の2世での光表なのだそうだ。時計職人を探すために、調べたとかで、離婚の上、血の繋がらない2番目の父親がいることがわかったと。連れ子有り同士の再婚なのだ。


ルームメイトの母親は、時の一族の中に特別なエルダーの一族なのだ。


「君も、時の一族の子孫なの」


僕は、話の腰を折ったと思いつつも、彼を見つめた。


「メティティは、血じゃないと説明されただろう」


彼は、静かにそう応えた。


「一族では、母だけに特徴が出た。そのせいか、母は、血の繋がりで説明したがる家族のなかに、居場所がなかった。命を仕事するためにとかいって、母は、消えた。前の晩に、内緒だと預かった箱が、この探知箱。」


頭を抱えて、悲痛な面持ちで

「母は、血の繋がった家族に殺されかけて、探知箱に逃げ込んだんだ。」

と話を結んだ。


「お母さんを、ここから出したいんだね」

僕は、箱を閉じた。


「僕が持ってるヒントには、同じ仕事を持つものは、ただ助け合う、とあったんだ。けれども、時計職人は、最初のメティティの一族だから、そもそも12人しかいないんだ。ツインメットがいるから、正確には24人か。世の中の何億のメティティから、24人を見つけるとか、遠い道だと思っていた。」


「お母さん、いつからあの状態なの?」

アマゾンの時に比べて、ちっとも弱っているようには見えなくて、僕はつい、なにも考えずにそういってしまった。


ルームメイトは、自嘲するように微笑んで、見せてくれたノートの情報を集めることで、お母さんにエネルギーを送っていることになるのだと教えてくれた。


探知箱のエネルギーは、メティティへの理解力に比例するようだ


「花咲宮を紹介してくれないか?」

ルームメイトに頼まれて、僕は、流されるように頷いていた。








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僕らの世界の関わり(仮) ひかりは以万 @ima-hikali

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