正義-La Justice-
「魔術の基本とは、枠組みを変えることにあるのだよ」
師匠はポツリ呟く。
「どういうことですか?」
私は問いかける。
「まず四大元素の火、水、風、地とは見たそのままの通りに描けば根本原理になり得ない……しかし火を熱力学、水を流体力学、風を電磁力学、地を剛体力学に置き換えればニュートンの世界では根本原理なり得る」
師匠の言葉に
「
私は異を唱える。
「確かに魔術とはいかにも近世的なものだ、それは科学的でもある。科学とは超自然的な数学を用いて自然を、つまり物質をコントロールすることにあるのでな、魔術とてソロモン、アブラメリン、ピカトリスク、ヘプタメロン。全てが近世あるいは中世後期、識字率に影響を受けている」
師匠は続けて
「魔術はサブカルチャーなのだよ、すなわちネット上の如何わしい噂と大してて変わらん」
と言った。
「信仰なき魔術とはそんなもんですね」
私の言葉に
「ゆえに枠組みを変える。弱い相撲取りが勝つ方法とはなんだと思う?」
師匠の問いに
「練習して強くなるか、相手に毒を盛るとか?」
私の答えに師匠は笑って
「純朴だなぁ、もう一つある、それは何だと思う?」
と返す
「わかりません」
私は素直に答える
「純朴なのか愚かなのかヒントを与えたのに、簡単だつまり枠組みを変える、自分に有利なルールを産み出し強要する、だ」
師匠は真顔になる。
「それでは相撲ではないのでは?相撲とはゲームです、ゲームはルールによって規定されるのですよ」
私の言葉に
「ルールは言葉だ、言葉は共通認識だ、共通認識は変えられる。相撲とは単に皆がそう思っているから相撲なのであって、皆とは個人の集合、個人すら衝動や認識の集合に過ぎない」
師匠は少しためて
「ゆえに魔術は枠組みを変える。それはつまり認識と衝動を変えることだ」
そう言い放つ。
「ひどい相対主義です!」
私は声を荒らげる。
「それこそが、
そう言って師匠はどこかに出掛けた。
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