戦車-Le Chariot-
本日は私が主役でボディスの召喚を執り行った。
ボディスは水星の悪魔であり水銀(毒性の強い化学物質)をボディスの印に固めたケースに入れ召喚を執り行う。
霊的存在を召喚する場合。高い精神性を要求される。
私はかつてはボディスの召喚を失敗した経験から特にボディスに対して苦手意識を持つ。
召喚はいくらか略式で行う。
細かい儀式手順は別途書き連ねる。
これ魔術日記ではあるが同時にただの日記でもある。
ボディス召喚時は非常に緊張した。
そもそも悪魔召喚とは悪魔がキリスト教理にのっとるかあるいは古代神話にのっとるかで大きく違うが、いずれにせよ自然法則を超えた存在であることにはかわりない。
だか相手(=ボディス)に悟られてはいけない。
緊張していることを悟られればそこにつけ込まれるのは自明の理。
私はあくまでも屹然と、ボディスに立ち会った。
ボディスは私が相応の準備をしたからなのか、あるいは後見人の師匠を警戒してなのかニヤリと笑わなかった。
儀式はボディスの安全な退去に終わった。
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「しかし、師匠、あれは本当にボディスなのでしょうか醜い毒蛇は見えなかったのですが」
私の疑問に
「いや、疑うことは適切に使わねば身を滅ぼすことになる、あくまでも魔術は信仰だよ」
師匠はそう告げ
「さて召喚の儀式のあとは肉が食いたくなるし神を冒涜さえしたくなる」
と続ける。
「魔術信仰は十分神に対して冒涜的ですよ……」
私は「なぜなら」を付け加え
「誠実ではないからです」
という。
「確かに俺は魔術なぞ信じいない、しかしあの出来事が思い込みならば、どこかで信じているのだよ」
師匠はそう簡単に言う。
そして
「誠実とはある種の虚偽だ、なぜなら人は完全に全てを信じることも疑うことも出来ない」
と言い
「例えば……」
師匠の例え話に
「身近ならコップ遠大ならUFOをお願いいたします」
「わかった」
師匠は軽く頷き
「例えばコップはその存在は常識では疑い得ないが、しかし方法的懐疑という
と付け加えた。
「願うならば、まともに存在しません。信じていないから願うのです」
私の言葉に
「では我々は非常に狭い世界に生きることになる。志向性を持つだけでそれは存在する。いかに存在ないモノを志向すなわち指し示すことができる?」
と師匠は反論する。
「世界を広くするために虚偽を働くとは……」
私の呆れ顔に
「虚偽がなければ世界はどこにもない、それはそうでなければならない虚偽それを人は真実という」
師匠の言葉に納得した
私は嘘に打ち勝った。
私は世界を手に入れた。
これは凱旋しければならない。
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