魔術師-Le Bateleur-

 私は魔術師=詐欺師の師匠と共に食事をする。

 肉は食べない。

「ところで……私は何をすれば?」

ソロモン王の小さな鍵レメゲトン』を禁止された私は魔術の道を進めない。

 あれは基本だから。

「そうだなそろそろ簡単な入門書を渡すか」

 師匠はそう言って。

 『魔術』と書かれた本を出す。

「本来、魔術は魔術書を読んで身につけるものではない。ギリシア哲学や古代神学、神秘主義、化学や数学の勉強で身に付けるものだか……まあここには基礎中の基礎が書いてある」

 私が著者のか名前に目をやると

 師匠のが名前が書いてあった。

 今まで私は基礎中の基礎すら学んでなかったのか……

 すこし愕然とする。

「はい、読んでみます」

 食事を終えて読んでみる。

__

 魔術とは自然の神秘なる力を自らの血肉へと変える、一つの技術思考様式である。

__

 そこには普段の師匠の文体とはかけはなれた読みやすい文章があった。

 目眩がする。

 くらくらクラクラ

 めまいがする

 私は倒れた。

 師匠の背中が見える。

 そして私の眼球も……

「アストラル離脱かできたか……だがそれは制御できていない」

 師匠は言う。

 そうだろう

 色の無い世界でただ師匠と私の眼球だけが見える。

 私は師匠の天の書体で書かれた

 -目を覚ませ-

 師匠の駄文を眺めて私は気付く。

 現象は偽り

 現象学フェノメノロギーは信じがたい嘘と偽りの体系と運動。

 善と悪の形而上学こそが真実と。

「背中に神がいます」

 私は感震えて、そう言って泣き出す。

「否、それは神ではない……」

 何をイッテルノ師匠?

「それは単なる創物神デミウルゴスだ、至高神はどこにでもいるし、どこにもいない」

 師匠……嫉妬しているの?神が私を見ているのを嫉妬しているの?

 ああ、なんてみっともない。

 叡智グノーシスを否定するなんて。

 自我を得たし、この自我を殺すことが始まりだ

 後ろで声がする。

 はい、私は死にます。

「死んではいけない!後ろを見ろ!」

 師匠の強い声に、つい後ろを振り返ると

 燃え盛る目持った獅子がいた

 凍える体をした蛇がいた。

 これは、神ではない!

 私は急いで自分の眼球に飛び込む!

__

_

私と師匠は食事をする。

「そろそろ、魔術書の入門書を読め」

 師匠がな『魔術』と書かれた紙束を渡す

 ひどい癖文字

 師匠のモノだ

 私は愕然とする私は入門にすらたっていなかったのかと……。

 

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