力-La Force-

「マスター、お疲れ様です……って疲れてないですよね」

 俺の耳に声が響く。

「ようアイ、あいからず一言多いな楽しくても疲れるものは疲れる」

 アイ……生活サポートAIに俺がつけた名前。

 この生活サポートAIは人類管理AIが使用を義務付けた文字道理の『生活サポートAI』だ。

「たく管理AIは支配したいのか解放したいのかわからんな……」

 俺の呟きに

「無論、適切な回答はありません」

 アイは楽しそうにそういう。

「相変わらず俺の喜ぶ回答をする」

 内心喜んでいた自分を情けなく思い、本棚の前にたちすさむ。

「今時本なんて読むのは物好きですよマスター」

 アイはそう言って俺をからかう。

「いい本を手に入れたんだ普遍論争。平凡社ライブラリーだ。後の人物事典だけでも価値はあるさ」

 俺の言葉に

「また、あの金持ちの道楽ですか『本』や『現金』は容認されているとはいえ『違法』なのですよ目の前で堂々と、されては困ります」

「あくまでも『本』は売買。『現金』は所持が違法だ。だから違法の『現金』を違法ではない『本』と交換しただけだ」

「また、屁理屈を、それを『売買』というですよ」

 アイはため息を吐いたかのようにスピーカーを震度えさせる。

「取り締まれないなら犯罪ではない」 

 俺の答えに

「そんなのは行政執行権の範疇ですよ、いつでも、なんなら今この瞬間にも通知ひとつで取り締まられる羽目になりますよ、まったく」

 アイはできの悪いレトロなスピーカーでも歌姫のごとく声を出す。

「あいからずいい声だな」

「そうなるよう調整されていますから」

 アイは続けて

「そしてその私を物のように扱うマスターはAI保護法により取り締まられる可能性があります」

「それは、申告制だろ生活サポートAIは奴隷スレーブだ決して主人には逆らわないよう出来ている」

 俺は続けて

「その意味でまったく無意味な法律だ、そもそもAI保護法で容疑にかかったヤツなんぞ民事刑事共に聞いたこともない、まぁ最も民事に関しては所有権がほぼなくなったこの世界では単なる結婚法だかな」

 俺のそう言いながら買った本を本棚に置き、本を取り出す。

「それで、マスター師匠『弟子』たる私になにを教えて?」

「読解力のないただ単語の多さから単語を推測するだけの存在になにかを教えるなんて出来ないさポンコツ」

その言葉にアイ

「では講義にマイクを傾けましょう」

 と返してマイクのモーター音が響いた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る