節制-La Temperance-

 ガッシャァン!

 ガラスの割れる音が響く

「ハン!見つけたぜマリア様……」

 俺はあまりの勢いに

「な、なんだ、なんだ!?」

 俺は狼狽えてしまってぜ。

「あー?民間人くん?ここからはホムンクルス回収特別措置法の出番だおとなしく生活サポートAIの指導にしたがってくんねーかな」

 それはドラム缶に手足が生えたかのような物体だった。

 声は音割れがひどく性別不明。

「さて自由を愛する猛禽マリア様おとなしく鳥籠に戻ってくんねーかな」

 その言葉に

「俺もそう思う、別に虐待されている訳じゃないんだろ、ならなぜ逃げる」

 俺の問に

「そうですわね、ここで少し抗議するのも悪くないかと思いますわ」

 マリアはそう言って葉巻を口に当てる。

「歴史修正教会。奴らが絶大な力を持って世界を征服しようとしていますわ、それを阻止しますわ」

 マリアの言に

「しかし」

 とアイが言いかけたとたん

 爆破音が響く。

 例のドラム缶が手に持った巨大な銃で発砲したのだ。

 「黄金の弾丸ゴールド・バレット。錬金術により錬成された特別な黄金製の弾丸だ、効果は簡単絶対必中と生命力の過度な増大によるショック症状……傷付けず生け捕りにするには最適な兵装だぜ」

 しかしマリアは、涼しげだ。

「フム、当たっても生命力の過度な増大によるショックを防げば、大したことなくて」

「ハッハー!そうでなくってはな!」

「しかし、なかなかの武装っぷり。ウン気が引けるけどあなたを護衛役に選ぶわ」

 俺はさっさ逃げることにする。

 プロジェクト=ホムンクルスとプロジェクト=マギアのぶつかり合いなんて神々の戦いだ、俺は付き合う気はないぜ。

「妙ですね、歴史修正教会なんて組織いかなるデータバンクにも記載がないですよ。ですよ」

「知るか、偶然だろ」

 アイの、猫を殺しそうな考察は無視することにする。

「いや、知ってもらわないと困りますわ……あなたはこれかる世界を救う英雄になってもらわないと困りましてよ」

 マリアの細い腕が俺を掴む。

「とにかく暫定名世界βに転送しますわ、あのヤンチャなドラム缶も含めてですわ」

「おいおい、異世界転移なんて流行らないぞ」

「かいつまんで説明しますわ、ホメロスのイリアスの中に秘密が隠されていまして」

「はあ、何?今から神秘の旅に出掛けるの」

 俺がそう言うと

「何喋ってんだー?」

 ドラム缶が暴れだす。

「少し立場を教えて差し上げまして」

 マリアが手をかざすと

 ドラム缶は恭しく頭、と思われる部分が下がった。

「テメ!動かねー何しやがった?!」

 ドラム缶が怒声を放つと

「ハッキングでして、制御AIの管理権を掌握したまででして、さて歴史修正教会との戦いが始まりまして」

 なんか門らしきものが開き俺とドラム缶が投げ入れられる。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

自分この不可思議な存在 坂西警護 @tarantulata2

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ