募集したのは実話怪談です。パクリ小説ではありま……あれ……お腹が??

@HasumiChouji

募集したのは実話怪談です。パクリ小説ではありま……あれ……お腹が??

 途中まで読んで、どこかで聞いたような展開だと思った。

 いや……もっと早く気付くべきだった。

 「実話怪談募集。大賞には賞金10万円」……それに釣られて、作り話を投稿するヤツも居るとは思ったが……にしても酷過ぎる。

 あの伝説のホラー小説のパクリだと気付くまで時間がかかったのは、文章が下手なせいで内容を理解するのも一苦労だったからだ。

 万が一、掲載になっても……かなりの手直しが必要だろう。万が一どころか、億が一、兆が一でも掲載しないが。

 何度も映画化されたあのシリーズ……しかし、多くの人は、映画の方の内容は知っていても、原作小説は読んでいない。

 それでバレないとでも思ったのか?

 第一、怪談と言っても「実話怪談」だぞ……。

「友達がTikTokにUPした謎の動画を見た途端、具合が悪くなり……病院に担ぎ込まれて、妊娠している事が判明したが、覚えは全く無い。そして、動画がUPされた時間には、その友人は既に自殺しており……生まれた赤ん坊の顔には、友人の顔に有ったのと同じ痣が……」

 そんな話、誰が「実話」だと思うんだ?


 やれやれ……あれ?

 クソ、急に腹が痛くなって……。

 若い頃から、そうだった。……胃腸が弱いのに食う量は多いし、栄養のバランスにも気を使ってる訳じゃないんで、週に1回は、腹具合が悪くなった挙句、とんでもない量のクソをひり出す羽目になる。

 もう、俺も齢だし、そろそろ、健康にも気を付けるべきかもな……。

 そんな事を思いながら便所に行こうとしたら、何故か席を立った途端に体がよろけて……編集部の連中は、俺のその様子を見て騷ぎ出し……。

 どうなって……あれ?

 気を失なう前に最後に見た光景は……俺のズボンのベルトとボタンが弾け飛ぶ……様……子……だ……っ……た……。


「あの……何ですか……?『中絶を希望しても出来ない』って?」

「ですから、文字通りの意味です」

 担ぎ込まれた病院で意識を取り戻すと……医者にそう言われた。

 だが……ここは……何の部屋だ?

 入院用の病室じゃない……。

 その医者以外には……何かの医療機器と看護師か検査技師らしき人物が……あ……人間ドックで似たモノを見た事が有るが……ええっと……?

「あの……カミさんとは離婚してる上に、心当りの有る女の子も……その……」

「ま……まぁ、口で説明しにくいので……実物を御覧になっていただくしか……」

 医者がそう言ってる横で……看護師……いや、多分、検査技師か?……は俺の腹に透明な粘液状のモノを塗り……えっ?

 な……なんだ……こ……この腹は?

 太ってるつもりだったが……こ……ここまでは……あ……この部屋に有る医療機器が何か思い出した……。

 たしか……エコーだか超音波なんたらだか云う……。

「あ……動かないで下さい」

 検査技師は、俺にそう言った。

 そして、モニタに映ったモノは……そ……そんな……馬鹿な……。もちろん、医者でも検査技師でも無い俺には、その画像から何かの診断を下せる筈もない……。

 だが……これだけは……判る……。

 こ……これは……まさか……?

「推定ですが……妊娠6ヶ月半と言った所ですね」

「ああ……あ……ああ……そ……そんな……馬鹿……な……」

「望んでも中絶出来ない理由は3つです。1つ目は、胎児の大きさからして……中絶が可能な期間を過ぎている可能性が大。2つ目は、こんな事態にどう対処すれば良いのかの参考になる前例が無い。3つ目は……出す穴が無い……」


 何故、そんな、が最初に気になったのか、俺自身にも判らない。

 俺の身にどれだけ異常な事が起きたかを、ようやく把握出来た時、まず思ったのは、あの自称「実話怪談」で、、と云う事だった。

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