リアル転移物語~契約師のスキルを使ってリアル系異世界でも楽勝です?

@DarkMacer

第1章…転移

第1話…プロローグ

私の名前は南ルビィ

職業は物理シミュレーション研究員。


大学でパイソンを専攻していたため、この職業に就けた。パイソンはAIを作るのに適したプログラミング言語だ。AIを用いたシミュレーションへ舵を取るべくパイソン使いが必要になった訳だ。


職場は金銭面での条件が良かったが、人間関係は最悪だった。

どうも学者って職種は変人が多いようで…


「南くん、組んでくれたAIだけど、リーマン幾何学きかがくの解釈が甘いんじゃないかね。」

「普段の生活態度が……なんじゃないかね」

「大学で……したり……ばかりやってたの?」


ふぅ、ディスりのみの説教、マウント取りたいだけかよ!

あたしは、根っからの理系だし、コミュ症だし、マウント取られたら何にも言い返せないんだよ!


と、思いつつ「はい」「すいません」「直ぐにやり直します」を連呼する。

こうなってくるとますますマウンティングが加速してゆく…


いつ終わるのか。


「教授ぅ、お取り込み中ごめんなさい。先生の受賞した論文で分からない所があるので教えてもらえますかぁ」


「うむ、どこかね」

嫌らしい笑みを浮かべながら、そそくさと声のする方へ足早に去ってゆく。


御子神みこがみ 四季しき、説教を途中で中断させた声の主


1年後輩で入った研究員、色白で薄化粧、服の趣味、立ち振る舞い、言葉遣い、清楚にカワイイをプラスした、男子職員1番人気の娘だ。


ニヤついた顔で教授が退室したのを見計らって、シキが近づいてくる。


「ホッッんと嫌になっちゃいますね、あの薄毛オヤジ!あんなヤツに権威持たせちゃダメでしょ!」

「最初会ったとき秒で辞めようかなって思っちゃいましたよ」


「ま~ルビ先輩がいる限り辞めませんけどねぇ」クスクス…


「あれ以上先輩虐めたら、髪の毛全部むしっちゃおうって思ってました」


かなりきわどいことを言ってくるが、どうやらそれは私にだけらしい。

多分彼女はサイコパス、2重人格臭くもある。それを見せてくるのも私だけだ。おまけにストーカーである。


「先輩このプログラム家残業でしょ。あんまり寝てないみたい。ほら、ここクマが出来てるし」


と言いながら顔を触ってくる。近い、近いよ…


「大体先輩のAIはリアル過ぎるんですよ。」


「え?リアル追求は正義じゃ…?」


「マジメ過ぎですよ。そもそもリアルを追求しても誰が評価してくれるんです?ここでは評価するのは、あの薄毛なんだから、薄毛の求める結果がでるモノを作れば良いんですよ。」


「ぐっ…確かに…」


「そんなことよりぃ、気晴らしに今晩お供させてくださいよぉ」


「い、いや、今日は早く寝ないと…」


「あぁ~、今日はイズミ君のライブ配信ありましたねぇ」


誰にもプライベートは明かしてないのに、なぜしのVtuberぶいちゅーばーまで知っているのか、多分だけど、裏アカまで把握されているとしか考えられない。


最初はびっくりしたけど、今はもう慣れた。なによりこんな清楚カワイイ娘がなついてくれるんだもん。いつも塩対応しているけど、ホントは好き。


仕事終わりっ、ふぅ、さすがに眠い。

ライブ配信見たいけど、アーカイブで我慢しておくかぁ…


国からの補助もあるせいか、建物は凄く立派、大きな吹き抜けもあり、凄く長い階段もある。登りには使わないが、帰りは階段を使う。そう、コミュ症だからだ。


仕事の緊張から解き放たれてか、睡魔が一気に襲ってきた。


体が傾く、ハッと目を開けると、風景が斜めに

周りがスローモーションに映る。ヤバい、ヤバい、ヤバい…、


ガツゥーン!頭に衝撃、続けざまに体に衝撃、複数…


「センパーイッ」


シキの悲痛な叫び声が聞こえる。

そんなに大声出さなくても大丈夫だよ、ホントにカワイイなんだから…



◇◇◇◇◇◇



真っ白な空間…私は死んだのか?


「25年間ご苦労さまでした」

「特例で貴方には転移のチャンスが与えられます。いかがします?」


そこには美麗な女神がたたずんでいた。


夢か?


いや、違う、夢なら夢と意識したら、とたんに覚めてしまう。

明晰夢めいせきむを体験しようと何回か試したが、明晰夢に至るのも困難な上、明晰夢を維持するのも一苦労なのだ。


そう、これは夢では無い。

私は階段から落ちて死んだのだ。


だが、しかし、ラノベ読者の私からすれば、現状は完璧に把握できた。何しろこの手のシミュレーションは、何回も何回もやっているからだ。

そう、選択するチート能力も複数候補がある。


自分の死は受け入れがたいが、「きたかっ」と言った感情が広がる。

この展開にワクワクしている自分がいる。


「転移ですか?転生ではなく…」

「転移になります。」


「そ、その、チート能力は付与されますか?」

「チートとは何です?」


「あ、あの、特殊な能力とか、レベル100倍とか、魔力が常人の10倍あるとか、全属性持ちとか…、」


「あぁ…そういうことですか…」

「レベルの概念はありません、仮想世界に転移するわけではありません。ただ魔法は存在します。属性の適正もある程度はあります。」


「それで…」


「平和な世界に、いきなり超人を堕ろせと?」


「そ、そうですよね…」


「ですが、能力の付与はあります。」

「契約師のスキルを付与します。契約師はこれから行く世界でも希少性があるので、食べるのに困ることは無いでしょう。」


やった、元より俺Tueeeつぇぇぇしたいわけではないし、食べるのに困らない。これ1番重要だよね。スローライフかぁ、前世ではちょっと働き過ぎたからなぁ…


「それでは転移します少し丈夫な体にしておきました。後は努力次第ですね。」


「え?あっ、ありがとうございますっ!」

…展開はやくね?


周りの景色が暗くなり、少しずつ意識が薄れてゆく

女神さま、綺麗な人だったけど、なんか冷たい感じだったなぁ


まぁ私を好きになってくれる人って少ないからなぁ…

シキちゃんどうしてるかなぁ……

悲しんでは欲しいけど、あまり落ち込まなければいいな……



◇◇◇◇◇◇



目が覚める。周りは?…平原。

遠くに城壁が見える。


うん安全だね。さて、早速城門前イベント行ってみますか…

歩いて30分ほど、ようやく城門へとたどり着いた。


「こ、こんにちわぁ」


「通行書」

「あ、ありません…」


「身分書は」

「あ、それもありません…」


けげんな顔で全身ジロジロと見られる。


「変わった服を着ているな」

……

「ひょっ、ひょっとして落ち人様か?」


あ~来ましたね、知ってますよ、転移者を落ち人って呼ぶこと。


「え、えぇ、そうですよ、タブン。チキュウから来ました。」


「す、少しお待ちください。連絡しますんで」


転移者ってここでは案外メジャーなんだな。他にも沢山いるんだろうか?

通されたのは城門の中に作られた小部屋である。

小1時間くらい待たされただろうか…


「ハァハァ…お待たせしまして申し訳ございません。ハァハァ…私、ここプレフォレ公国の宰相を務めていますマルシャンと申します」


「南ルビィと申します。ついさっき落ちてきたばかりで、こちらの世界はさっぱりです。チキュウのニホンから落ちてきました」


こちらの流儀に会わせて「落ちる」という表現にした。


「おぉ、ニホンですね、知っています。落ち人様はニホン出身が多く、私も何人か知っています」


「え、会えますか?」

…やはり、情報は大事だよね…


「残念ながら他界されています」


「そうですか、残念です」

…それほどショックではなかった。コミュ症にとって、なれ合いはストレスだし、スローライフの邪魔になる可能性もある。


「ここに落ちたと言う事はイラ様でしょうか?」


…イラ?あぁ、女神様の名前か…

「女神様の名前は聞いてないのでわかりません。すいません」


「可能であれば、イラ様の加護を教えて頂けますでしょうか?もちろん、可能な範囲だけで結構ですので」


興奮冷めやらぬ態度で身を乗り出してくる宰相、ちょっと怖いよ…


「契約師です。」


「おぉ、契約師のスキルをお持ちなんですね。契約師は非常に数が少なく貴重な存在です」


女神様の言ってたとおりだ、このまま宮廷契約師のポジションゲットかな…


「それで…」

「以上ですが…」


「そうですよね、簡単に加護は明かせませんよね」

「いえ、契約師のスキルだけなんですが…」


「チート無しですか?」

…宰相なんでチートって言葉知ってんの??…


「え?今チートって言いましたか?」

「はい、以前落ち人様が加護の事をチートと呼んでいらっしゃったので、加護の事をチートと呼ぶのかと…」


…あんの女神ぃ~、知らんぷりしといて、やっぱりチートあるんやないかいっ!!

チート候補を複数用意した時のことを思い出し、怒りがフツフツとこみ上げる。


「どうかされましたか?」

「あ、いえ、大丈夫です…そう言えば丈夫な体も追加で頂いたような気がします」


「おぉ、そうですか、それは凄い、イラ様の加護で守られた体ですね!」


魔力と腕力の簡単な測定をされた…


「正直に申し上げますと、魔力量はこの世界の一般人と同じくらいか、少ない程度、力に関しては10歳の子供と同程度かと…」


「しかしですね、イラ様の加護がこんなものだとは、到底思えません、隠れた才能が必ずあるに違いありません」


「何か体に変化がございましたら、直ぐに私に連絡ください」

と言って身分書とお金を机の上に置いた。


「1ヶ月分の生活費になります。足りなければこの身分書を城に提示して頂ければ、私との連絡が取れるようになります」


「そこまでして頂けるのですね」

「はい、イラ様の落ち人様をむげにはできませんから」

…すごい女神さま


「あの、手っ取り早く働き口を探す事はできますか?」

「宮廷内ではもう既に契約師は数名いますので、空きは無いのですが、契約師は引く手あまたです。働き口に困ることはないでしょう」


…よっしゃ、これはいきなりイージープレイってやつですねぇ…


それに窮屈な宮廷での仕事より、自由なスローライフを目指す私にとっては、案外いい話の流れかも。

そのうち超絶スキル発現ってフラグも立ってた気もするし…


順風満帆、新しい異世界でのスローライフ、楽しみだなぁ。

ニヤニヤしながら城壁の小部屋を立ち去った。


眼前に広がるのは中世ヨーロッパ風の景色。

ゲームの世界でしか見たことの無い世界が、リアルに目の前に広がる…


私、本当に死んだんだなぁ、でも大丈夫、ちゃんと受け止められてる、

今は期待しかない。やるぞっ、異世界での新生活。

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