第6話…決意
…
「おはようございます。体はまだ痛みますか?」
「1日半寝てましたよ、もう少し安静にしてた方がいいですね」
「えっ、あ、おはようございます」
少し考えて、何となく状況が理解できた。
「私は、生きてるんですね」
「そして、シスターが助けてくれた」
修道服を着ていたので、思わずシスターと呼んでいた。
「うふっ、理解が早いのね。私はマリア、よろしくお願いしますね」
「ありがとうございます。マリアさま」
反射的に手を胸の前で組んで、ややうつむいた。
「ん~、あなた、落ち人さん、ですよね?」
「少し、聞きたいのですが、元いた世界にマリアという名の有名人いらっしゃいますか?」
「あ~、ははっ、いらっしゃいましたね…」
「その方は聖母と呼ばれていました」
「なるほどですね、落ち人様の反応が一様に同じだったので、気になっていました。それはとても光栄ですね」
クスクスと笑う笑顔が、マジ聖女…
私が見てきた中で、マリアさま、あなたが1番の清楚ですっ!
「それでは今後、様付けは止めて、マリアとお呼びください。かぶるのも、くすぐったいですし…」
…確かに…
「はい、シスターマリア」
「体の具合はいかがですか?」
「はい、痛みもないですし、調子いいです」
軽く頭を掻く…
「いつっ…」
「あっ、頭痛みますか…」
マリアさまが心配そうに聞いてくる。少し大げさな気もするが…
「あ、いえ、たんこぶを触ったみたいで…」
「あぁ~、たんこぶは治りが遅いと言いますからねぇ…ウフフフッ…」
なんだろう、目が泳いで、冷や汗も、うっすらと…
「頭を殴られた記憶は無いんですよねぇ…」
「そ、そ、そーなんですねぇ、あ、お腹空いたでしょ?食事の用意しますね」
「頭が…」
「もーしわけございません!抱き上げた時に、ビックリして、手を離してしまいましたぁ…その時にゴンッって…」
慌てふためいて、平謝りするマリアさま…
「クスクス…」
「ごめんなさい。イジワルしちゃいました。冗談です」
「それに、マリアには何をされても、大丈夫です。命の恩人ですから」
「ほんとに…」
「ありがとう」
マリアさまの手をギュッと握りしめた…
…
…
それから、食事を頂き、事の成り行きをマリアさまに話した。
下の階では、複数の子供の声が聞こえる。
ここは教会でもあり、孤児院でもある。
「それは辛い目に遭いましたね」
「ですが、あの牛女、全くもって節操のない…無自覚の天然たらしが…」
…いや、顔が怖いですよ、マリアさま…
牛女ってアヴァさんの事だよね?知り合いとか??
「男2人組は、見つけたら、私に知らせてください。ただでは済ましません」
…いやいや、顔が怖いんですって…
「ありがとうシスターマリア、でも、見かけたら私がけじめつけます。
納得のいかない顔をしている。多分心配してくれているのだろう…
軽い雑談をして、また眠りについた。実はまだまだ体が辛い…
たっぷり寝たので、体がだいぶ軽い感じだ。
それもそのはず、2日間マリアさまがずっとヒールをかけてくれたのだ。
あんなにひどいケガだったのに、ヒールって凄い!
子供達と一緒に朝食をとる。楽しい、至福の時間だ…
マリアさまに当日の話を聞いた。女神様が助けてくれたことも…
「
礼拝堂の奥には女神像がある。あの時見た女神様だ。
マリアさまが祈りを済ませる。
私が膝をつき祈り始める…
何を思ったか、立ち上がる。自分でもよく分からなかった…
「女神さま、あたし、今まで、色々あったけど、女神さまのこと、恨んでいません!」
「助けてくれて、ありがとう」
「あたしは、これから、強く生きていたい」
「もう、わたしは、誰にも負けたくないっ」
女神像が薄く光ったような気がした…
「こらこら、イラさまに、そんな口のきき方ダメですよ」
…
「ルビィ、あなた、イラさまに愛されているのね…」
「こんなに喜んでらっしゃる波動は初めてです」
「ちょっと、
――――天界にて――――
「お姉様、良かったですね。いい娘で」
「ダミア」
イラは胸に手を当て、半ベソをかいていた。
「あの娘、ひょっとして、あの問題も解決してくれるんじゃない」
「ダミア、それは期待していません。万に一つの可能性も無いですよ」
「今は生きる希望に満ちている。それだけで嬉しい…」
「それに、あれは貴方の方が関わってるでしょ」
「まぁ、そうなんだけどね…」
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