第68話…約束
…どうしてこうなった…
わたしの目の前にはドトロア公国の王と王妃と王子、3人そろってわたしに跪いている…
いや、それだけではない、王の宮廷にいた全ての人が跪いてる。見るからに高位の貴族達も全てだ。一緒に付いてきてくれたシキちゃんも同様だった…
…ア~ン裏切ったなシキちゃん、どうせ伏せた顔の下はニヤニヤしてるに違いない…
「この度は女神ダミア様の恩恵、受けて頂き
「は、はぃ…」
…まぁ、半分はめられた感じがしますけどね。でも王様がわたしに敬語を使って喋ってくるなんて、ムズムズする…
「近年ドトロア、いえ近隣諸国が天候不順による凶作続きで、国の運営もままならなくなっていました」
…その原因はドンノッサ族が奴隷落ちしたからですよぉ。この時代の農作物は天候の影響をもろに受けるみたいだからねぇ…
「豊穣の聖女様がよろしければ、ここドトロアに居を構えて頂けないでしょうか、もちろん出来る限りのもてなしを用意してます」
…そうなるよねぇ、聞いた話だと豊穣の聖女をめぐって戦争が起きたこともあるとか…
「はい、それに関しては女神様との約束があります。諸国を回って人々を豊かにして下さいと」
…もしそうなったら、こう言う事に決めていた。束縛はきっついですからねぇ…
「そうですか、それならば仕方ありません。ですがドトロア国にいる間は私共のもてなしを受けて下さい」
「はい、わかりました…」
という
…だれか助けてぇ…
◇◇◇◇◇◇
今後の予定としては私用でプリフォレ公国へ戻り、それからミリーの故郷フロア国へと向かう。ミリーからお願いされたのだ。
ミリーは政略結婚が嫌でスノーフレーク家から家出してきたのだけれど、さすがに気が引けてるらしかった。でも豊穣の聖女の護衛となると話は違う。なんせ家訓なのだ。そこで正式にわたしが挨拶して免罪符を得ようという魂胆だ。
もちろん2つ返事で承諾した。いつもお世話になってる?もんねミリーには…
プリフォレ公国に向かうと告げたら、一個師団を付けると言ってきたので、丁寧にお断りした。大名行列はさすがにねぇ…
それに今のメンバーなら一個師団よりも頼りになるからね…
今までのメンバーにマリアさまとアヴァさんが加わった形だ、なんの心配も無い。
ただ、真っ直ぐにプリフォレ公国に向かうわけではない。途中ドトロアの穀倉地帯を抜けながら行進する。少し回り道をする感じだ。
豊穣の聖女の恩恵は数百キロにも及ぶらしい。『周りの植物が…』って言ってたけど、そんなに広範囲だったとはね…
でもなるべく農作物に影響が出るように夜はツーリングに出かける。
クロエとシルビーにまたがり長距離を移動してまた帰ってくる。夏の昼間だと2人ともだれ気味なんだけど、今は冬も近いし何しろ夜だ。
変態した2人では夏場は毛皮を着て汗もかかないので熱を逃すことが出来ない。いくら2人が持久力があっても、熱交換が出来なければ走ることさえままならない。
わたしとレイラがクロエとシルビーにまたがって長距離を移動する。ベルト状の鞍を付けているがバランスを取るのが難しい。最初北斗を相棒に指名したのだけど、シルビーにうまく乗れなかった。なので運動神経抜群のレイラに頼んだ。
3人とのツーリングは楽しい、最初はこの4人で色々出かけたよね。
シルビーとクロエとレイラも楽しそうだ。特に奴隷商問題が片付いたのが大きかったのかも。もう一抹の不安も3人にはない。
お弁当を持ってピクニックに行く感じ。昼間は馬車で寝て、夜に出て帰ってくるの繰り返し。なのでプリフォレ公国に付いたのはドトロアを出発してから2週間ほどかかった。
まぁ、予想はしてたんだけど、プリフォレ公国でも街はお祭り騒ぎだった。更に、周辺国タンドラ、クリタ、サインの王族、首脳が集結していた。それもあってかプリフォレ公国の盛り上がりは凄かった。アヴァさんもこんなプリフォレ公国は初めてと言っていた。
まぁ、わたしは気が重かったんですけどね…
その前にプリフォレに帰ってきた1番の目的を果たさないとね…
わたしはプリフォレの奴隷商前に立っていた。懐かしいな、ここからわたしの異世界生活は始まったのね。あの時の思い出が頭の中を駆け巡る。
色々あったなぁ…
中に入る、最初は豪華だと思っていたけど、ドトロアと比べると小さい奴隷商だ。ドーズ親分を呼び出そうとしたけど、丁度受付で出くわした。あ、ミルトンも一緒だ、どこかに出かけるのだろうか…
2人を見てももう何も感じない。怒りも恐れも…
「やぁ、久しぶり。覚えてる?」
「な、おま…あなた様は…」
あれ?もう身バレしてるみたい。跪かれた…
イヤイヤ、凄いね豊穣の聖女様って…
特に恨み節もないので、用件を伝えた。
「はいこれ、トロットからの手紙だよ」
トロットからの手紙にはロペちゃんの奴隷権利譲渡について書かれている。と言うかトロットにわたしが書かせたものだ。
ドーズは不満そうな顔をしていたが、協会会長のお言葉には逆らえない。簡単に権利を譲渡できた。相も変わらず奴隷の譲渡は簡単だ…
…さて、後は契約内容の書き換えだけだな…
◇◇◇◇◇◇
「いらっしゃいワンワン!ワンワン亭へようこそってルビィ久しぶり、今この国はアンタの話題で持ちきりだよ」
…人によってわたしへの反応は違うな、ユイットはいつもと変わらずフランクだ。いや、ユイットなりの気遣いだと思う。さすがだ…
「久しぶりユイット。うん、大変な事になっちゃった。ハハ」
ドンッ
誰かがわたしに抱きついてきた…
「久しぶりロペちゃん…
い、いだだだっ!」
「もう、寂しかったんだから」
「うん、ゴメンね…」
そう言いつつわたしはロペちゃんを抱きしめたまま契約魔法を唱えた…
――――――――――
ペネロペ・ラペーシュの契約更新を願う
契約神ミスラの名の下に契約師ルビィが命ずる
前契約の完全消去
契約主の承諾無しに本契約の更新を禁ず
アグリメント
――――――――――
「終わったよ~約束だったからね」
「うん、覚えててくれたんだ…」
涙をごまかすためだろうか、離れようとしない…
ここまで色々あったけど、頑張って良かったなぁ…
つくづくそう思った…
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