第3話…予防接種

城内見物も一通り終わり、何回も考えたが、やはり奴隷商で働くのが1番だと思った。条件よすぎる。空いた時間で魔法の勉強もしてみたいし…


奴隷商の門を叩いた。


「おぉぉ、来て頂けましたか」


満面の笑顔で歓迎される。悪い気はしないな…


まずは住み込みで働くことにした。屋敷内には15人ほどの人が働いている。メイド5人、料理人3人、いかつい男達7人だ。


セキュリティは万全と言っていた、だろうねぇ…


「初めましてペネロペと申します。健康担当のメイドです。

これから1週間ほど健康面の管理をします」


口数の少ないペネロペは、一見すると15歳くらいの少女だが、妙に大人びた雰囲気を醸し出している。ツインテールにウサギの付け耳が印象的で、カワイイ以外の形容がないくらいにカワイイ!


ただ、とても冷たい印象だ、私嫌われてるのかな…


彼女が私に付いたのは訳がある。


転移者の死亡率が高いのだ、死亡率8割、多いのが感染症での死亡である。

とにかく病気に弱いらしいのだ。


TKGを連呼して、米に卵をかけて、食中毒でそのまま死亡というケースもあったらしい。日本に住んでいると感覚麻痺するよねぇ…


転移者は感染症に対する耐性が、赤ちゃんレベルまで落ちているということ。後天的な免疫が全てリセットされていると考えればいいのかな。


加えて、国全体の衛生管理も日本と比べれば低い。


健康面のケアもしてくれるとは、奴隷商選んで正解だったのかも…


さらに驚きなのは食事。

日本で2万円位のフルコースが3食出てくるのだ。


ついでに言うと、用意された自室も豪華、宿屋の5倍の広さに加え調度品も一級品、清潔でベッドも広くてフカフカ…


なんだこの至れり尽くせり感は…

ここを体験したら、もう宿屋には戻れないよぉ…


浮かれているのも、つかの間、ここから1週間ほど身動き取れない事となる。


奴隷商に来てから3日目、私はベッドの上でうなされていた。

予防接種…

この世界の予防接種、凶悪すぎる。


予防接種で人が死ぬのだ、それでも予防接種した方が、死ぬ人数が少ない。仕方なく受け入れている感じ。貧困層は予防接種できない。動物が風邪引きにくい様にこの世界の人達も病気に対する抵抗力が高い。


「具合はどう」


聞き方はあっさりだが、本当に心配しているのが伝わる。

ツンデレ認定だよロペちゃん。


「うん、だいぶよくなった」


感覚的にはインフルエンザにかかった感じだ…


「そう、よかったわ」


「ロペちゃんも、あまり寝てないんでしょ、少し休んだら」


「ご心配なさらず、仕事ですから。…あと、ペネロペです」


ロリ幼女が、『仕事ですから』って…

あっ、私の中で扉が開いた感じが…


「なに、ニヤニヤしてるんですか、気持ち悪い」


っくぅぅ…もっと言ってくれるかな…


「でも、ありがとう。私1人暮らしが長くて、看病されたこと無いから、嬉しくって」

「ホントにありがとね」


ロペちゃんの顔がみるみる赤くなってゆくのが分かる。

大きめの耳が真っ赤になってる、これはヤバい…


「なっ、仕事だからって言ってるでしょ!」


顔を背けて、部屋を立ち去るロペちゃん…

なんだ、この多幸感…


2時間くらいたっただろうか、熱も引いて体もかなり楽になった。


ロペちゃんが部屋に入ってくる。指に注射器を3本挟んでるな。

少しニヤついてる、なかなかシュールな絵面えづらでもある。

いや、これもいいな…


「どう、体調は」

「うん、復調といっていい感じだよ、ロペちゃんのお陰だね!」


「へ~、そういう感じなの」

照れながらも意味深な言葉をはさんでくる…

どういう意味かな??


「じゃあ、追加で予防接種するね」

「今度は5種混合だから、ちょっとキツいかも」


ん?手には3本あるよね。ひょっとして5×3の15種って事かな?


「えっ、えっ、大丈夫なの?」


「うん、あんたなら大丈夫、多分死ぬことはない、1ヶ月くらいかな…」

「死なないように、ガンバって」


イヤイヤ、その薄笑い、やめてくれるかな…

つか、頑張るポイントが100パー運だよね…


そこから4日間、生死の境をさまよった…

ロペちゃん付きっきりで看病してくれてる。なんだろう、このまま死んでもいいかなって、思っちゃう。破壊力っパねぇな、ロリ幼女…


だが、5日目で完全回復。食事がうまい。


「体の調子はいかがですか」

奴隷商の親分ドーズが聞いてくる。


「はい、おかげさまで、調子いいです」


「そうですか、良かった。医者の落ち人様がきてから、だいぶましになったと聞きます」


医者の転移者ありがとう、生きてられるのも、あなたのお陰です…


「それでは、これからのプランですが、契約魔法を覚えて頂きます」

「契約魔法はスキル所持者であれば3日で覚えることが出来ます。単純な仕様ですから」


「習得を確認してから、まず1人目の契約をして頂きます」

「よろしいですか?」


「分かりました、よろしくお願いします」


契約魔法


契約魔法…

すっごく簡単…

テンプレートとなるスペルを覚えさえすれば、後は条件を代入してゆくだけ。

条件も単純で

・誰が

・誰に

・何を

・いつまで

と言った感じ、もちろん、複雑な条件を付けることも簡単にできる。

条件分岐とかね。

例えば、

契約期間は3ヶ月だけどその間契約者が○○をするたびに契約が1日伸びるとか。


ん~これってプログラミングでも初級のスパゲッティプログラム?


1日もかからずに習得出来てしまった…


奴隷契約の術式は2段階方式で

基本となる奴隷契約をほどこして、その上に細かい条件の契約をかぶせる。


そして、基本となる契約は、1度ほどこしたが最後、一生消すことが出来ない。

とても怖いシステムだ。

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