第4話…契約スキル発動
「今日が契約師としての初仕事です。緊張すると思いますが、数をこなすと慣れますし、私どもも、しっかりサポートさせて頂きます」
「はい、よろしくお願いします」
「今日の奴隷契約者は、囚人です。この男は4人も人を殺していて、その全てが、女子供です。本来なら死刑の予定だったんですが、恩賞がでて、奴隷落ちが許可されました」
「ルビィ様がいなければ、死刑が確定する予定だった男です。まさに命の恩人ですな。男もルビィ様に感謝しているでしょう」
なんか引っかかる言い回しだな…
まぁ、でも囚人の奴隷落ちって、よくあるパターンだよな…
男が連れてこられる、囚人生活が長いのか、やせ細って怖い感じはしない。
「本当に、約束守ってもらえるんですか」
「当たり前だ、次口きいたら、ただじゃすまねぇぞ」
なにやら
私は緊張のせいか、会話をくわしく聞く余裕がなかった。
「ではルビィ様、よろしくお願いします」
「はい、ではいきます」
基本詠唱後、床に魔方陣が浮かび上がる…
―――――――――
我の意を持ち…
束縛の命に従順なること
顕然の意を示せ
―――――――――
「承諾の言葉をお願いします」
「承諾します」
―――――――――
汝は囚われし者
求めよただ唯一の制約を
生涯の契りを約束し
服従の鎖に身を任せ
契約神ミスラの名の下に契約師ルビィが命ずる
アグリメント
―――――――――
1瞬強い光を放った後、徐々に魔方陣が消えて無くなる。
成功だ。
追加契約が、契約者と奴隷の基本的なテンプレだったので、1分程度で済んでしまった…
パチパチパチ…
「さすが、契約スキル保持者、見事な契約でした」
「お疲れでしょう、ささ、お茶でもいかがですか」
ドーズ親分上機嫌だ
残念ながら、体は全く疲れていない。体はだ…
契約をした上の階が少し騒がしい…
夕方、ロペちゃんがやって来る。ベッドに横になるのを進められた。
いい香りが漂う。香を焚いてくれている。
「はじめは、慣れないかもしれないけど、そのうち慣れるわ」
「今は何もかも忘れて寝るのがいいわ。それが1番あなたのためよ」
やはりロペちゃん優しいな、ロリにあやされるのも、わるく…な…い……
香の効果だろう、すんなり眠りにつけた。
――2回目の契約――
「今日の契約は2人です。同時に契約できますので、ほぼ1人と変わりありません」
「子供なんですが、2人とも孤児院の問題児でして、盗みを繰り返して、孤児院を追い出されたのを私どもが保護しました。このままこちらで保護もできませんし、ほっとけば多分死ぬでしょう」
「ですが、奴隷契約を結べば、メイドとして生き抜くことができます。私どもは貴族との太いパイプがあるので、裕福な生活を約束できるのです」
「ぜひ、2人を救ってもらえませんんか」
「はい、わかりました」
…なんか説明長いな…
2人の元へ案内される。
2人は目の前にある、ごちそうに夢中だ。よほどお腹が空いているのだろう。
1人は獣人、頭から角が渦巻いている、羊の獣人か。もう1人は人間
どちらも10歳くらいだろうか。
特に羊の巻き毛は抱きしめたいほどに魅力的だ、モフモフしたいっ…
「さぁ、2人ともこっちに来て、両手を合わせて
…意外と子供あやすの、うまいな用心棒…
でも…
ロペちゃん、なんでそんな辛そうな顔してるの…
「お願いします。」
基本詠唱を展開…
…
「汝は囚われし者」―チガウ
…
…
「求めよただ唯一の制約を」―違う
…
知ってた、嘘ついているの、知らないふりをしていただけ…
卑怯者それは私…
このまま契約を執行すれば、2人の一生が決まってしまう…
この契約が何なのかも、この2人は知らない…
…
…
「できません!」
「すいません、できません」
…
「ちっ」
「嫌な予感はしてたがな」
「ミルトン、物の道理を教えて差し上げろ」
瞬く間に顔つきが変わる。あんたはそっちの方が似合ってるよ、親分…
廊下に出された私の首を、片手で締め付けそのまま持ち上げる。
「
声にならない…
ドスッ!ドスッ!
腹に鈍痛が走る。加減したパンチだ、多分…
「ぐぇぇ…」
首をつかまれたまま床に伏せられ、ミルトンが顔を近づける。
ミルトンの手は片手で首を一周する程のデカさ、落とす様な締めではなく、苦痛と恐怖をあたえるように、締め付ける。
「契約師さま、ここに来てから、いい暮らしできたよなぁ」
「受けた恩は返すのがこの世界のジョーシキって知ってっかぁ」
怖い、恐い、コワイ…
恐怖でうなずくが、首が決められているので、うなずく事もできない。
「まっとうな人間ならジョーシキ守ろうや」
「いい暮らしと、明日川に浮かぶのと、どっちがいい?」
脅しのプロ、
「
「なんだ、分かってんじゃネーか」
「なら、よろしく頼めるよなぁ」
「はひっ」
「ヒュー…ヒュー…」
拘束から解放されたが、息が苦しい。恐怖で足がガクガクしていて立てない…
ミルトンの肩を借りて、契約室に戻った。
「いやー物わかりの良いお方で助かった」
「さぁ、いい仕事して、いい食事にありつこうではありませんか」
「嫌なことを忘れる、気持ちいい薬も用意してますよ」
ヘドがでる…
「はい」
だが、恐怖で拒否する気力が失われていた。
自分自身にもヘドがでる…
「では、始めてください」
汝は囚われし者
…
求めよただ唯一の制約を…ぐぅぅ
…
涙を抑えようとしても、大粒の涙が後から後から押し出される
ぐふっ、ぐふっ…
生涯のっ…
契りを…
「気をしっかり持ちなさい」
ロペが檄をはさむ…
「うあぁぁぁぁん…うぉぉぉぉぉん」
その場に泣き崩れた…
2人の子供が、心配そうに駆け寄るが、護衛に引き留められる。
優しい子たち、一目見たときから分かっていた、盗みを働くように見えない。
「ダメだなこりゃ」
「おい」
先程の加減した拳ではない、怒りにまかせた拳がおそう。
「ぐふぅ、がはっ」
「ドーズ様、私が言い聞かせます」
ロペがとっさに前にでる。
「黙れ!」
「命ずる、この部屋から退室しろ」
ロペちゃんが、ぎこちない動きで部屋から出て行く…
あぁ…
あなたも奴隷だったのね…
そうか、ずっと私を憎んでいたのかなぁ…
契約師の私を…
顔がパンパンに張れ、口の中はドロリとした血で一杯になる。
2人の子供が大泣きしている。ごめんね、怖い物見せちゃって…
「おい、殺すなよ」
「ドーズ様、こいつ売っちゃいますか?」
「バカか、こいつは
売りに出しても、殺しがばれても、面倒になる。ヘタすりゃ商売できなくなる」
「ちったぁ考えろ、このバカ!」
「へ、へい、すいやせん」
いや、ドーズあおるなって…
ミルトンの怒りの矛先がこっちに…
顔もグーではなくパー。致命傷を避けて痛めつける目的の暴力
体中がきしむ。心を折るための暴力とでもいおうか…
しかし…
痛い、でも、痛くない…
胸の奥の方がもっと痛いから…
私はコミュ症、でもね、コミュ症が発動しない人達がいるの…
それは子供たち。子供たちを前にすると、私のコミュ症がフッと消えるの。
理由は分からないけど…
だからね…
子供をいじめるヤツは…
許せない
「のっ!!」
不意な動きに反応が遅れる…
「ぎゃぁぁぁぁぁ!!」
右手の爪がミルトンの顔の肉をえぐり取る。爪がはがれ血がにじみ出す。
生爪をはがす程の力で、かきむしられたミルトンは思わず叫び声を上げた。
「っのアマぁぁ」
「殺すなよ!ミルトン」
怒りに満ちたミルトンをみてドーズがとっさに叫んだ。
遠慮なしの暴力がさらに私におそいかかる
あぁ、すごい、死ぬ手前ってこんな状態なんだ…
ボロボロになった私の前で、ニヤつきながらドーズが言ってくる。
「ったーく、落ち人ってヤツは、どいつもこいつも、人権やらなんやらで奴隷商を目の敵にしやがる」
…
「間違っても公国にチクるんじゃねぇぞ、もし、そうなったら、優秀な衛生メイドがいなくなるかもしれねぇからな」
ドゲスが…
口に出そうとしたが、うまく喋れない。
部屋から引きずられる…
爪がはがれた指を床に立てながら…
ずっと泣き続けている2人の子供に
ごめんね、助けてあげられなくて…
ごめんね、弱くて…
ごめんね、ごめんね…
感覚が麻痺しているのか、体の痛みは感じない…
情けなさに胸が締め付けられる。ただそれだけだった…
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます