これは皆の涙で舗装された道…。これは皆の血で舗装された道…。
- ★★ Very Good!!
超能力を持つ事が許されない世界を舞台に、その超能力者の人間模様を、暴力と廃退で彩って描かれた物語です。
生まれついて身に付いてしまっていた能力で害悪とされてしまうのだから溜まったモノではないというのは、明言されずとも分かります。
死ぬか、さもなくば国のために使えという選択を求められるのが理不尽だというのも同様に。
しかし一際、理不尽なのは、自分の意志で決定ができず、「同じ超能力者を狩るしかない」と思わされてしまう主人公の存在でしょうか。
もしも敵が、この世の破壊や地震の欲望に忠実なだけの相手だったならば、ひょっとすれば良かったのかも知れませんが、この物語は敵も味方も、あくまでも人間。
長所も短所も感情も情動も持つ人間同士が狩る、狩られる状況に落ち込んでいます。
双方の心理描写が丁寧であればある程、世界の理不尽さが深く感じられ、その深淵ともいうべき場所が持つ重力が読者を引きつけて止まない事でしょう。
読者として、登場人物に問いたい。
「あなたの能力は、才能ですか? 欠陥ですか?」
才能ならば、これ程、楽ではないのでしょう。欠陥ならば、これ程、辛くはないのでしょう。…ふと、そんな事を思ってしまいました。