第18話 夢か現か?⑤

 子供の頃、毎年夏休みには、祖母の家に泊まりに行った。


 そこの家は、隣の家までの間に裏山へと続く道があり、ずっと行けば、丁度山向こうのお城の裏手に出られるという。


 私は、一度だけ、その祖母の家にいる従姉妹と一緒に少しだけ登ったことがある。


 道はずっと続いていたが、クマゼミの鳴き声が引っ切り無しに続き、木々によって日差しが遮られていた為薄暗く、山の匂いが濃厚にして、一種異様な世界に迷い込んだように感じた。


 時々クマも出るというが、従姉妹達は、こういうクヌギやナラの大木にカブトムシやクワガタがいると言って、どんどん進んで行く。


「もういいから、帰ろうよ」

 わたしは、少し怖くなって、思わずそう言っていた。


 みんなは、不満顔だったが、わたしは我れ先にと登って来た道を引き返して行った。


 最後には、みんなで走って降りたけど、わたしは山の奥の方から何やら追いかけて来る気がして、必死だった。


 それから、何事も無く夕食前となり、みんなでトランプを楽しんでいたが、わたしは、途中で1人だけトイレへ行った。


 そのトイレの目の前にはあの裏山へと続く道があるのだが、実はそのトイレのすぐそばには井戸もあり、ちょっと怖かった。


 トイレには、その道沿いに窓があり、夏なので、開け放たれていた。


 わたしは、見るでも無く窓の方を見てしまった。


 すると、見た事もないモノがこちらを見ていた。


 一瞬、タヌキ?と思ったが、怖くなって目を背けた。


 そして、もう一度そこに目をやると、もうそこには何も居なかった。


 やはり、わたしは怖くなって、小もそこそこに、みんなの所へ行って、その事を話した。


 一番年上の綺麗な従姉妹が、私と一緒に、もう一度トイレに行ってくれた。


 そこで、わたしは、ゆっくりと小をすることが出来た。


 アレは、一体何だったのか?


 後で祖母に訊いたら、山からは時々山神様のお使いの者がやって来るから、とか言われた。


 あの井戸も関係があるのって訊くと、あそこは近づくんじゃないよと厳しく言われた。


 その井戸は、周りが囲ってあるため、そうそう近づけないけど、何かがあると子供心に思った。


 わたしは、その頃から、非日常を時々考える不思議大好き人間になった。


 そうして、あの事があってから一年と経たずに祖母はあの世へと旅立った。


 アレは祖母の事を知らせに来てくれたのかと今では思っている。


 ただ、アレはどこからのモノなのか?

 井戸を通して、異世界から祖母を見にやって来たのだろうか?


 昼間は、山に居て、わたし達を見ていたのかもしれない。


 多分、祖母はその異世界人と交流があったのかもしれない。


 ただ一つ、疑問がある。

 アレを、見たのはわたしだけだという事。


 だったら、アレがまたわたしに会いにやって来るのかもしれない。


 この連載が終了する時、あるいは更新がされなくなったら、わたしは異世界へと行ってしまっているに違いない。

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