第16話 エヘッ! 16

「さあ! おみっちゃん! ガッポリ儲けるよ! イヒッ!」

 守銭奴の茶店の女将さん。

「いらっしゃいませ! 美味しい! 美味しい! お茶とお団子はいかがですか! エヘッ!」

 おみっちゃんは茶店の看板娘のエヘ幽霊。

「私の名前はおみっちゃん! 私の夢は江戸で歌姫になることです! エヘッ!」

 いつも明るく笑顔で元気に前向きなエヘ幽霊の物語。


「さあ! 他の茶店を倒して、うちの茶店が世界一になるんだよ!」

 女将さんの野望は世界一の茶店になることだった。

「え~。私は歌姫になりたいだけなんですが・・・・・・。」

 あまり乗り気ではないおみっちゃん。

「いいのかい? うちの茶店が世界一になったら、おみっちゃんも世界一の歌姫になるんだよ!」

 女将さんの悪魔の囁き。

「やります! 茶店世界一! その時は私の時給にも上げてくださいね! エヘッ!」

 おみっちゃんは江戸に行く旅費を貯めるために茶店でアルバイトしている。

「まず犬の国から攻め込んでやる!」

「おお!」

 女将さんとおみっちゃんは犬の国に攻め込んだ。


「犬の国に攻めて来るとはいい度胸だ! ワン!」

 アメリカン・ドックの茶店の犬が怒っている。

「うちのお茶とお団子の方が美味しいんだよ!」

 対決姿勢を煽る女将さん。

「そうだ! そうだ!」

 便乗するおみっちゃん。

「くらえ! ワンワン・ファイア!」

 犬は口から火を吐いた。

「いけ! おみっちゃん!」

 女将さんはおみっちゃんを差し出す。

「ええー!? 私ですか!?」

 思いもしなかったおみっちゃん。

「ギャアアアアアアー!」

 おみっちゃんは炎に包まれて倒された。

「見たか! 犬の力を! ワッハッハー!」

 勝ち誇る犬。

「おみっちゃん。惜しい看板娘を亡くした。」

 茶店の看板娘の死を嘆く女将さん。

「勝手に殺さないで下さい!」

 しかし、おみっちゃんは生きていた。

「バカな!? おまえは燃え尽きたはず!?」

 犬は驚く。

「ふっふっふっ。ふがいっぱい。私は既に死んでいる。私は幽霊なんです。エヘッ!」

 可愛い子ぶるエヘ幽霊。

「なに!? 幽霊だと!? ふざけるな!?」

 憤る犬。

「女将さん、酷い。いくら私が幽霊だからって身代わりにするのは。」

 怒るおみっちゃん。

「+50円するから許して。」

 下手に出る女将さん。

「やったー! 50円アップだ! わ~い! エヘッ!」

 単純に喜ぶエヘ幽霊。

「ちょろい。イヒッ!」

 ほくそ笑む女将さん。

「それではせっかくなので歌を歌いたいと思います。」

 おみっちゃんは大好きな歌を歌うつもりである。

「なぜこのタイミングで歌う!?」

 戸惑う犬。

「1番! おみっちゃん歌います! 曲は犬の玉転がし! ガガガガガガガガッガガガガガアッガガガガガガガガガガガガガッガガガガガガ! ガガガガガガガガッガガガガガアッガガガガガガガガガガガガガッガガガガガガ! ガガガガガガガガッガガガガガアッガガガガガガガガガガガガガッガガガガガガ!」

 おみっちゃんは極度の音痴でゴットボイスの持ち主であった。

「ギャアアアアアアー! なんだ!? この歌声は!?」

 苦しむ犬。

「ガガガガガガガガッガガガガガアッガガガガガガガガガガガガガッガガガガガガ! ガガガガガガガガッガガガガガアッガガガガガガガガガガガガガッガガガガガガ! ガガガガガガガガッガガガガガアッガガガガガガガガガガガガガッガガガガガガ!」

 更におみっちゃんは気持ち良く歌を歌い続ける。

「心の中から邪な気持ちが消えていく!? ギャアアアアアアー!」

 犬から争おうという邪気が消えていく。

「ご清聴ありがとうございました! ああ~気持ち良かった! エヘッ!」

 いつも明るく笑顔で元気に前向きなエヘ幽霊。

「私は何をワンワンしていたのだろう?」

 犬はすっかり素直な性格になっていた。

「ワンワン。アメリカン・ドックの隣でお茶とお団子も売ってもいい?」

 おみっちゃんは犬のことをワンワンと仲良くなった。

「いいよ。ワン。」

 ワンワンもお茶とお団子のことが好きになった。

「最初から争わないで、お茶とお団子とアメリカン・ドックを一緒に売れば戦わなくて良かったんだね。みんな手と手をつないで仲良しさ。歌は世界を救うだね。エヘッ!」

 少しだけ世界を平和にしたエヘ幽霊。

「これでガッポリだ! イヒッ!」

 女将さんはアメリカン・ドックの販売権を手に入れた。

「ワンワン! ワッハッハー!」

「おみっちゃん! ワッハッハー!」

 おみっちゃんはワンワンとお友達になった。

 めでたし。めでたし。


 おまけ。

「まあ、同じことの繰り返しなんかだと1話1000字を超えたら良い所。」

 でもなんかむずがいいな。戦わない戦闘シーンはもう限界だろう。おみっちゃんの歌を変えるぐらいしかできない。やはり茶店の歌姫2のように地名か登場人物で回していくしかないのだろうか?

「北斗の拳なら南斗正拳、北斗の兄弟。」

「聖闘士星矢なら黄金聖闘士、海王、冥王。」

「ドラゴンボールならピッコロ、ベジータ、フリーザ。」

「毀滅なら無惨。」

「進撃は巨人。」

「アラレちゃんならドクターマシリトのキャラメルマンシリーズ。」

 結局は新しい敵キャラクターを登場させて戦わせないと物語が終わってしまう。

「コナンも新しい殺人の犠牲者たち。」

「ワンピースも新しい島で設定を変えて一からやり直し。」

 逆説に考えると、戦っているだけで物語って成立するんだなっと。

「ということは対決軸の敵だけちゃんと設定していれば物語は続いていけるのか?」

 おみっちゃんの敵ってなんだ? 敵でなくてもいいのか、邪魔するものか?

「妖怪。人間。魔王。神・・・・・・。」

 気がつけばおみっちゃんは全部倒してしまっているんだよね。デスボイスで・・・・・・。

「これがインフレで終了という奴か。」

 歌を歌っているだけなのですが・・・・・・。

「もっと妖怪なら妖怪で10匹くらい倒して間延びさせなければいけなかったのか。」

 妖怪1匹だと1話で終わってしまっている。人間1匹、魔王1匹、神1匹を倒したので4話で皆殺しにしてしまい空虚感に苛まれている。

「おみっちゃんはデスボイスでインフレだったのか・・・・・・。もっと地味な所をダラダラと続けていかなければいけない。」

 それこそ名探偵コナンの様に。黒の組織は倒さないが新しい事件は次々とやって来る。

「おみっちゃんは魔王は倒さないが魔王の手先の魔物と毎回戦う。」

 正にアンパンマン、ドラえもん、仮面ライダー、ウルトラマン、セーラームーンではないか!?

「最終回までボスを倒してはいけない。」

 忍たま乱太郎の冷えた八宝菜は倒してはいけないボスキャラ。手先の毒玉忍者隊は何回倒しても良い。つまりそういうこと。

「なんとなく気が紛れてきたぞ。」

 でも物語の限界を感じるな。タイトルと設定を変えただけで、毎回同じことの繰り返し。

「そうなると同じことの繰り返しで優秀な下書きを作った人間の勝ちですか? エヘッ!」

 茶店の歌姫1は完璧にそれだけで10万字いけたからな。

「かといって、売り出されている人気作の文庫本を読んでも訳の分からん文字ばっかりは多い。プライドの高い作者と編集者のクオリティー重視がアホな一般大衆の読書離れを増長させたのだろう。」

 茶店の歌姫みたいに誰にでも読める分かる作品でなければいけない。

「後2万2500字はどうしよう?」

 もう物語は同じことの繰り返しで目的の最後のボスさえ倒さなければインフレを抑えてつづくということは理解したので、残りでもう一度おみっちゃんの人生を振り返ってみよう。


「まず村に生まれたらしいおみっちゃん。お父さんとお母さんと幸せに暮らしていました。おみっちゃんは歌を歌うことが大好きな女の子でした。夢は江戸で歌姫になることでした。ある日、村に化け物が攻めてきます。お父さんもお母さんも魔物に殺されてしまいます。それを見てしまったおみっちゃんは自我を失います。そしておみっちゃんも殺されてしまいます。

 しかし、その時、奇跡が起こりおみっちゃんは幽霊になり歌を歌い出すのでした。天性の極度の音痴なデスボイスで。魔物たちはおみっちゃんのデスボイスに耐え切れないで滅んでしまいます。残ったのはおみっちゃん一人だけでした。

 一人彷徨っているおみっちゃんはお腹が空きました。お団子を飲むかい? お茶もあるよ。親切な茶店の女将さんに出会いました。一命をとりとめたおみっちゃんは女将さんの元で茶店で働くことになりました。」

 これから茶店の歌姫1。トータルして考えると同じことの繰り返しだが終わらない物語としては優秀なんだよね。

「ある日、おみっちゃんが気が付くとロンドンに流されていました。イギリス王室の王位継承権争いに巻き込まれる

おみっちゃん。」

 これが茶店の歌姫2。

「おみっちゃんは魔界に行ってみることにしました。そして魔王を歌の力で倒してしまい、魔王おみっちゃんの誕生。調子に乗って天界の神も歌の力で倒し天界の神になるおみっちゃん。魔界と天界の支配者になったおみっちゃん。」

 これが茶店の歌姫3。ここまで強くなってしまうと、もう敵がいないというドラゴンボール風のインフレーション。

「やっぱりお終いですな。」

 それとも敵を宇宙人にして続けるか?

「変だが・・・・・・面白いな。宇宙人編で試してみるか? 雑魚との連戦。」

 なんだろう? 異世界ファンタジーだろうが現代ファンタジー、現代ドラマだろうが、結局やることは同じである。


「妖怪と宇宙人の宇宙戦争。面白いかもしれない。」

 昼飯を食べて思う。

「同じことの繰り返しと空虚感で書くのか、それを受け入れて、タラタラ続けるのかだけ。」

 少し心境の変化が変わったかな。確信犯的に同じことの繰り返しでいいのだ。

「仮に宇宙人をデスラー総統のガミラス星でガミラス宇宙艦隊としよう。」

 これをテスラー総統が率いるカミラス星でカミラス宇宙艦隊にすればいいのだ。

「私は大銀河の支配者テスラ―総統だ! 地球を支配しにカミラス星からやって来た!」

 テスラー総統の地球への宣戦布告。

「え? それが私とどういう関係が? 私はただの茶店の看板娘ですよ?」

 おみっちゃんは今日も茶店でアルバイトをしているのだった。

「あんたが魔界も天界も支配して、もうあんたに敵う敵がいないから、大至急、敵を宇宙から呼んできたんだろう。作者は苦労するんだから。次の展開を考えるのに。」

 女将さんがフォローする。

「ええー!? 私の性ですか!?」

 いつも明るく笑顔で元気に前向きなエヘ幽霊。

「そうだよ。おみっちゃんの性だよ。時給から50円引いておくからね。」

 守銭奴で非情な女将さん。

「そんな!? 私は何も悪くありません! ただちょっとカワイイだけです。エヘッ!」

 可愛ければ何でも許されると思っているエヘ幽霊。


「ここからが問題で、おみっちゃんの悪い所は最初にテスラー総督を歌殺してしまって、全宇宙をエヘ幽霊が支配するからいけないんだろ。」

 注意する女将さん。

「歌殺・・・・・・ここに来て新しい言葉が思いつかれた。アイデアの神は降臨されるのだ。アハッ!」

 もう30万字でネタ切れに思えるが、まだまだ話が続く。

「でも支配してから、現職の魔王と神を兼任している私に挑戦してくるという形で物語は続けてますけどね。エヘッ!」

 いつも明るく笑顔で元気に前向きなエヘ幽霊。

「斬新すぎて、理解力のない一般大衆が受け入れられないんだよ。」

 女将さんの千里眼。

「読書離れした一般大衆にも困りますね。エヘッ!」

 もっと自分を応援して欲しいと思うエヘ幽霊。


「テスラー艦隊でテスラー砲もいいんですが! エヘ幽霊。」

 恐ろしいことを思いついたエヘ幽霊。

「ガンダムとかウルトラ怪獣と戦わせましょう。宇宙が部隊だけに。エヘッ!」

 恐ろしい発想。

「妖怪ロボ! おみっちゃん! 出動!」

 大銀河で宇宙軍と地球軍の戦いだね。もちろん妖怪もロボットにしなければ! エヘッ!」

「新しいことを考えるのは楽しいな。エヘッ!」

 その論理でいくと・・・・・・。

「異世界ファンタジーもロボット化すれば、竜王ロボ、バハムートでいいのだ。」

 そもそもバハムートならロボット化しなくても巨大だから宇宙怪獣と戦える気がする。

「バルタン星人・・・・・・ハルタン星人。若しくはじゃんけんのチョキ星人でいいのだ。」

 変な所で? 妖怪のロボット化が実現した。

「ロボット、怪獣。他に宇宙の敵はいるのか? 宇宙ウイルス。宇宙AIはロボットか? 惑星に、星座。フリーザ。エクスデス。」

 宇宙の悪と戦ったら、正に地球防衛軍だな。

「ああ~クレヨンしんちゃんのカンタム・ロボは、ガンダムから濁点を取っただけだったのか。」

 同じ発想で驚く。プロと同じ手抜きを考えるなんて自分を褒めてあげたい。アハッ!

「茶店の歌姫、宇宙編を書いて無事に30万字を書き終えよう。」

 創作って面白い。アハッ!

 つづく。

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