茶店の歌姫3
渋谷かな
第1話 エヘッ! 1
「やって来ました! 魔界!」
おみっちゃんは魔界にやって来た。
「私が魔王になって、江戸で歌姫になるのだ! ワッハッハー!」
おみっちゃんの夢は江戸で歌姫になることです。
「そんなことはどうでもいいから茶店の準備をしておくれ。魔界でもガッチリ稼ぐんだからね。イヒッ!」
女将さんはおみっちゃんの保護者でもあり師匠でもあり茶店のオーナーでもある。
「ええー!? 魔界に来てまで仕事をするんですか?」
驚く茶店の看板娘。
「当たり前だよ! 所詮この世は銭次第ってね。お金があればどこででも生きていけるからね!」
女将さんは守銭奴である。
「大丈夫ですよ! お金なんか要りませんよ! 私が魔王になったら魔物たちを自由に操れますからね。エヘッ!」
いつも明るく笑顔で元気に前向きなエヘ幽霊。
「その魔物に払う賃金はどうするんだい?」
女将さんの素朴な疑問。
「・・・・・・。」
深くは何も考えていないおみっちゃんは言葉を失う。
「いたっしゃいませ! お茶とお団子は要りませんか! いらっしゃいませ! どうぞ! どうぞ!」
お金の大切さを知ったおみっちゃんは茶店の看板娘として一生懸命に働く。
「女将さん! お茶とお団子を二人前です!」
「あいよ。 お茶とお団子喜んで!」
魔界では珍しい茶店は、あっという間に大行列でお客様が殺到した。
「なんかお客様は女性が多いね?」
女将さんは魔界なので魔物のお客さん多いと思っていた。そしておみっちゃんを食べてくれれば世界が平和になると考えていたからだ。
「当然ですよ。私たちは魔女の学校に通う女の子の後をつけて魔界にやって来たんですから。」
おみっちゃんたちは魔女の女の子の後をストーカーして魔界にたどり着いた。
「あ! あの子ですよ! 私たちがストーキングしたのは!」
魔界に案内してくれた魔女っ子も茶店にお友達とお団子を食べに来ていた。
「魔王が勇者に倒されてから魔界は秩序の無い内戦状態だわ。」
女の子は3人で魔界の現状を話をしていた。
「戦わない無抵抗な魔界の民が戦いに巻き込まれ泣き叫んでいるだけ。本当に可哀そうだわ。」
戦争が起こると被害にあうのは関係のない人間だけである。
「一層のこと私たちが戦って魔界の戦いを終わらせるっていうのはどう? 平和な魔界を作るのよ!」
若い女の子たちは真面目に魔界のことを考えている。
「その話! のった! 私たちで魔界を統一して魔界を平和にしましょう!」
そこにしゃしゃり出てくるおみっちゃん。
「あなたは?」
魔女の女の子たちはおみっちゃんにひいている。
「私はおみっちゃん! 夢は江戸で歌姫になることです! エヘッ!」
自己紹介するエヘ幽霊。
「それと魔界の平和とどういう関係が?」
女の子たちの素朴な疑問。
「私が魔王になったら、魔物たちに私を江戸に運んでもらうの! エヘッ!」
決して一人では江戸にはたどり着けない呪われているエヘ幽霊。
「特に邪な理由ではないのね。安心したわ。私は魔女のメグ。よろしくね。おみっちゃん。」
女の子の名前はメグ。
「私はサリー。よろしく。」
二人目の女の子がサリー。
「私はアッコ。よろしく。」
三人目の女の子がアッコ。
「メグちゃん、サリーちゃん、アッコちゃん。こちらこそよろしく。」
おみっちゃんは三人のお友達を手に入れた。
「みんなで魔界を統一するぞ!」
「おお!」
おみっちゃんたちは魔界を統一することで一致団結する。
「はいはい。お茶とお団子ができましたよ。」
そこに女将さんがやって来る。
「良かったね。おみっちゃん。魔界でもお友達ができて。」
優しい女将さん。
(おみっちゃんが魔界にいる間は江戸が滅びなくて済むね。イヒッ!)
本音は違った。
「そうだわ! 私たちはお茶とお団子を一緒に食べて義兄弟の契りをかわしましょう!」
メグが義兄弟の契りを提案する。
「それいい! カッコイイ!」
今時のノリの良いサリー。
「義兄弟っていうより、義姉妹ね。」
勢いのあるアッコ。
「女将さん、私の分もお茶とお団子を下さい。」
おみっちゃんも女将さんに要求する。
「いいよ。バイト代から引いておくからね。」
しっかり者の女将さんにサービスはない。
「そ、そんな!? 鬼! 悪魔! 女将さん!」
おみっちゃんは大変な所で働いている。
「準備が整ったわね! 始めるぞ!」
4人分のお茶とお団子が用意された。
「私たちは生まれた時は違えども、死ぬ時は一緒に死のう!」
「おお!」
誓いを立てて4人は一緒にお茶とお団子を食べる。
「これが有名な茶店の誓いだよ。」
後見人は女将さんである。
「これで私たちはお団子4姉妹よ!」
ポッキー4姉妹みたいなものである。
「魔界を統一するぞ!」
「おお!」
盛り上がるお団子4姉妹。
「私からあんたたちにサービスでプレゼントをしよう。はい。」
女将さんはメグたちに耳栓を差し出す。
「耳栓?」
メグたちは意味が分からない。
「いいかい。おみっちゃんと旅をする時は耳栓が必要になる。命にかかわるから絶対に耳栓を手放してはダメだよ。」
耳栓の注意事項を伝える女将さん。
「え? はい。」
いまいち耳栓を理解はしていないメグたちであった。
「これより私たちは魔女っ子義勇軍ね!」
魔女3人とおみっちゃんで新しい軍隊が結成された。
「ええー!? おみっちゃんと愉快な仲間たちがいいな。」
おみっちゃんは抵抗する。
「魔法少女おみっちゃんはどう?」
どんどん魔女から離れていく。
「魔女の茶店ってどう? ギルド名みたいでカッコイイんだけど。」
ここまでくると何でもありである。
「あ!」
その時、魔女は大切なことに気がついた。
「私たちは魔女だから魔法が使えるけど、そもそもおみっちゃんって魔法が使えるの?」
魔女っ子たちの素朴な疑問。
「いいえ。魔法は使えませんよ。」
もちろんおみっちゃんは魔法は使えない。
「ならおみっちゃんは魔女っ子軍団に入れないじゃないか?」
そもそものお話。
「大丈夫です。私は魔法は使えませんが、忍術なら使えます。エヘッ!」
可愛い子ぶるエヘ幽霊。
「忍術?」
魔女っ子たちは忍術を見たことがない。
「分かりやすく忍術を実演してみましょう。」
おみっちゃんは忍術を使うつもりである。
「いきますよ! 渋い谷の茶店流! 忍法! 口寄せの術! いでよ! 鬼さん! 姉さん! 無口さん!」
おみちゃんは口寄せの術を使う。
「またおまえか! 俺様を勝手に呼び出すんじゃねえ!」
鬼さんこと鬼の頭領の酒呑童子。
「そうだよ。おみちゃん。もしも着替えてたりお風呂に入っていたらどうするんだい?」
姉さんこと九尾の狐の玉藻の前。
「・・・・・・。」
無口も個性の鬼神の大嶽丸。
「キャー!? 出た!? 化け物!?」
「デーモンよ!? それに猛獣!? 邪神もいるわ!?」
「助けて!? お母さん!?」
魔女っ子たちは日本の三大妖怪を見て悶絶する。
「大丈夫よ。3人とも私のお友達だもの。エヘッ!」
化け物ともお友達のエヘ幽霊。
「誰がお友達だ!」
否定する酒呑童子。
「なんであんたみたいのが日本の大妖怪なのか不思議だよ。」
おみっちゃんを含めて日本の4大妖怪である。
「・・・・・・。」
頷く大嶽丸。
「おみっちゃん。ぜんぜんお友達っていう感じじゃないんだけど?」
首をかしげる魔女っ子たち。
「細かいことは気にしない! エヘッ!」
いつも明るく笑顔で元気に前向きなエヘ幽霊。
「どう? これが忍術よ!」
堂々と忍術をひけらかおみっちゃん。
「忍術は召喚魔法ね。」
「確かに魔法も忍術も同じようなものだから問題無しね。」
「おみっちゃん。一緒に魔界を統一しましょう。」
魔女っ子たちはおみっちゃんを受け入れる。
「おお!」
改めて一致団結するおみっちゃんと魔女っ子たち。
「ありがとう! 鬼さん! 姉さん! 無口さん!」
忍術を認めてもらえたの協力をしてくれた日本の三大妖怪にお礼を言うおみっちゃん。
「二度と呼ぶな!」
「口寄せする時は前もって連絡をしてからにしなよ。」
「・・・・・・。」
日本の三大妖怪は言いたいことだけを言って帰って行った。
「いや~良いお友達を持ちましたな。エヘッ!」
友人に恵まれていると思っているエヘ幽霊。
「おみっちゃん。お友達は選んだ方がいいわよ。」
戸惑う魔女っ子たち。
「魔女っ子義勇軍の誕生よ!」
「おお!」
おみっちゃん、メグ、サリー、アッコの4人で魔界を統一するための魔女っ子義勇軍が結成された。
「オラオラ! お団子とお茶を貰おうじゃないか!」
茶店に魔界らしく荒くねった魔物たちが現れる。
「やめてください! 順番抜かしは! みんな行列に並んでいるんですから! 順番を守ってください!」
順番抜かしの荒くねった魔物たちに怒る。
「うるさい! 魔界では強さがルールだ!」
魔界は弱肉強食であった。
「死ね! 小娘!」
魔物がおみっちゃんに襲い掛かる。
「キャアアアアアアー!」
おみっちゃんは棍棒で叩かれて死んでしまった。
「おみっちゃん!?」
その残酷な光景に後退りする魔女っ子たち。
「俺たちに歯向かうから悪いんだ! さあ! お茶を持ってこい! 団子もだ! ワッハッハー!」
調子に乗る横暴な魔物たち。
「おみっちゃんが死んじゃった!?」
「私たちと死ぬ時は一緒だと誓ったのに!?」
「怖いけど、この魔物たちは絶対に許さない!」
魔女っ子たちは初めて友の死を目の当たりにする。
「おみっちゃんの仇は私たちが討つ!」
そして魔女っ子たちは覚悟を決める。
「おい! 魔物たち! 悪いことはやめなさい!」
遂に魔女っ子たちは魔物たちに声をかける。
「なんだ?」
魔物たちは魔女っ子たちの方を見る。
「ここは魔女の国だ! おまえたちの好き勝手にはさせないぞ!」
魔女っ子たちが魔物たちに宣戦布告する。
「魔女見習いか? おまえたちで俺たちの相手が務まるかな。」
「ケッケッケ! 遊んでやるぜ! 学生のお嬢さん方!」
魔物たちは魔女っ子たちを見て弱いとバカにしている。
「何を!? ムカつく! 絶対におまえたちを倒してやる! いくぞ! サリー! アッコ!」
「おお!」
魔女っ子たちは魔物たちに宣戦布告する。
「燃えろ! 火の魔法! ファイア!」
「凍てつけ! 氷の魔法! アイス!」
「光れ! 稲光! 雷の魔法! サンダー!」
魔女っ子たちは魔法を唱えて魔物たちを攻撃する。
「ギャアアアアアアー!」
魔法は魔物に命中する。
「やったー! どんなもんだい!」
「私たちの魔法も大したものね!」
「これなら勝てるかも?」
魔女っ子たちは初陣で自分自身に自信を高める。
「よくもやったな! 皆殺しにしてやる! ガオー!」
仲間が倒されて激怒する魔物たち。
「キャアアアアアアー!」
魔物の猛攻が始まる。
「悔しい!? 私たちでは魔物に勝てないの?」
「思いだけではダメなの!? やはり強い力が無ければ敵に勝てない?」
「私たちの冒険は始まってもいないのに、ここで終わるの?」
魔女っ子たちは死を覚悟した。
「どうした? 口ほどにもない。魔女の国など攻め滅ぼしてやるぜ! ワッハッハー!」
魔物たちは強く楽勝モードで調子に乗っていた。
「その通り! 魔界の魔物って言っても大したことはないですね。エヘッ!」
魔物の横で倒されたはずのおみっちゃんがケロッと笑っている。
「そうだ! 俺たちも大したことはない! ワッハッハー!」
何も気にしないでおみっちゃんの言葉に乗っかる魔物たち。
「んん? ギャアアアアアアー!?」
おみっちゃんに気づいた魔物たちが大声を上げて驚く。
「バカな!? 確かに殺したはずだ!? どうして!? おまえが生きているんだ!?」
魔物たちの素朴な疑問。
「お答えしましょう。それはですね。私は既に死んでいるからです! 実は私は幽霊なんです。エヘッ!」
おみっちゃんは幽霊だった。
「なんだと!? おまえ!? 幽霊だったのか!?」
魔物たちはおみっちゃんが幽霊だと聞いて衝撃を受ける。
「はい。そうなんです。エヘッ!」
いつも明るく笑顔で元気に前向きなエヘ幽霊。
「笑って誤魔化すな!」
魔物たちはからかわれた気分である。
「それでは皆様の輝かしい前途を祝して、私が一曲歌いたいと思います!」
おみっちゃんの夢は江戸で歌姫になることです。
「ヤバイ!?」
女将さんに戦慄が走る。
「あんたたち! 直ぐに耳栓をつけるんだよ!」
女将さんは魔女っ子たちに耳栓をするように言う。
「はい?」
魔女っ子たちは素直に耳栓をしてみた。
「おお! 歌を歌ってくれるのか! すまんな!」
「歌え! 歌え!」
魔物たちは歌のプレゼントを喜んだ。
「それでは1番! おみっちゃん歌います! 曲は良い日・旅立ち!」
おみっちゃんが歌を歌い始める。
「ガガガガガガガガッガガガガガアッガガガガガガガガガガガガガッガガガガガガ! ガガガガガガガガッガガガガガアッガガガガガガガガガガガガガッガガガガガガ! ガガガガガガガガッガガガガガアッガガガガガガガガガガガガガッガガガガガガ!」
おみっちゃんは極度の音痴でデスボイスの持ち主であった。
「なんだ!? 耳が潰れる!?」
「酷い音痴!? これ本当に歌声かよ!?」
魔女の国にやって来た魔物たちがおみっちゃんの素敵な歌声に酔いしれる。
「ガガガガガガガガッガガガガガアッガガガガガガガガガガガガガッガガガガガガ! ガガガガガガガガッガガガガガアッガガガガガガガガガガガガガッガガガガガガ! ガガガガガガガガッガガガガガアッガガガガガガガガガガガガガッガガガガガガ!」
更におみっちゃんは気持ち良く歌を歌い続ける。
「死にたくねえよ!? ギャアアアアアアー!」
「マジかよ!? ウゲエー!」
「歌なんかで殺されるのか!? アベシー!」
「フナッシー!」
「ボキャアー!」
「ヒデブー!」
「ブシュー!」
颯爽とおみっちゃんのデスボイスに体が耐え切れずに体の内部から破裂していく魔物たち。
「ご清聴ありがとうございました! ああ~気持ち良かった! エヘッ!」
何事もなかったように大好きな歌を歌い終えたエヘ幽霊。
「あれ? 魔物さんたちがいない。最後まで私の歌を聞いてほしかったな。」
最後まで体がもたなくて消えていった魔物たち。
「どうだい? 耳栓がいるって言った意味が分かっただろう。」
女将さんが魔女っ子たちに確認する。
「はい。それにしてもおみっちゃんはすごい音痴だ!?」
魔女っ子たちは知ってしまった。
「もしかしたら危険な女の子と義兄弟の誓いをしてしまったのでは!?」
寒気がする魔女っ子たち。
「でも、おみっちゃんがいれば魔界を統一することができるかもしれないわ!?」
そしておみっちゃんの可能性にも気づいた魔女っ子たち。
「よし! やるぞ! 私たちで魔界を制覇するんだ!」
「おお!」
決意を新たにするおみっちゃんと魔女っ子たちであった。
つづく。
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