第6話 エヘッ! 6
「やって来ました! 魔女の国!」
おみっちゃんたちは魔女の国にいる。
「いらっしゃいませ! 美味しい! 美味しい! お茶とお団子ですよ! 気力回復! 男が立ちますよ!」
茶店の看板娘としてアルバイトに精を出すおみっちゃん。
「どこでそんな言葉を覚えてくるんだか。」
呆れる女将さん。
「じゃあ、ナメクジ国を征服しに行ってくるね。」
「大丈夫。今回はモモモ先輩がいるから。」
「初めまして。モモモ先輩です。私はギギみたいにヘマはしませんよ。」
「おみっちゃん。またね。バイバイ。」
こうして魔女っ子とモモモ先輩はナメクジ国に向かった。
「いいな。私もナメクジの国で歌いたかったな。」
全国ツアーだと勘違いしているおみっちゃん。
「さあ、どうすれば一般大衆が応援してくれるのか? 共感してくれるのか? を考えようかね。」
「おお!」
女将さんとおみっちゃんの戦略会議が始まる。
「基本は正義貫徹。弱気を助け、悪を討つ。これが一般大衆が好きなストーリーだ。」
基本はこれです。
「一層のこと茶店でお茶とお団子を出しながら人生相談でもやりますか? ドラゴンが襲ってきたから助けてほしいとか、富士山の麓の樹海に美味しいリンゴがあるから取って来てほしいとか。」
おみっちゃんの考えは短絡的だった。
「いいかもしれないね。一般大衆には分かりやすいからね。」
女将さんも理解を示す。
「悪はドラゴン国で、ドラゴンに困っている人々を助ける私。完璧な物語ですね。エヘッ!」
自画自賛なエヘ幽霊。
「こういうのはどうだい? メグが助けてと来ても助けない。サリーが助けてと来ても助けない。アッコが助けてと来て初めて助けるんだ。さすがに三回もお願いされたら助けてやろうかなって気分になるわな。」
女将さんの理論。
「さすが女将さん! 三顧の礼ってやつですね!」
ここに甦る茶店版の三顧の礼。
「後、こんなのもあるよ。おみっちゃんが自分が音痴だと気づいてしまうんだ。そして自分の夢が叶わないと悟った時、おみっちゃんは魔王になる。そしてデスボイスで人々を殺しまくって本当の魔王として君臨するんだ。」
女将さんはおみっちゃんに音痴だと事実を告げる。
「またまた。ご冗談を。この私が極度の音痴でデスボイスな訳ないじゃないですか。私の夢は江戸で歌姫になることなんですから! エヘッ!」
他人の話は気にしないエヘ幽霊。
「なんだろうね。毎回歌を歌って倒すだけの展開に飽きてきた。」
さすがに茶店の歌姫3にもなると女将さんはおみっちゃんの歌オチに飽きてきた。
「そんな!? 私が歌わないでどうやってドラゴンを倒せるというんですか?」
異議を申し立てるおみっちゃん。
「本当にそうなるとアンパンマンや仮面ライダーのように戦闘シーンは直ぐに必殺技で終わっちゃうんだね。」
哀愁の漂う女将さん。
「戦いモノでもアイドルモノでも最後にちょこっとだけですからね。後はなんとかファンを作ろうとする共感してもらえると嬉しいな~のプチストーリーばっかりですからね。」
構成が地味をダラダラ、最後に花火をドカーン! これでDVDが売れるからお金持ちのファンは有難い。実際、売り上げが合って利益が出ないと続編は作ってもらえない。
「おみっちゃん改造計画だ! どうすればおみっちゃんにファンが取り憑くか考えよう!」
「おお!」
女将さんとおみっちゃんは今後のことを考える。
「基本は「助けてくれ! オラの村がドラゴンに襲われているんだ!」的な村人がやって来て、私が「歌の講演依頼ですね! 行きましょう! 是非ともいきましょう! 私、歌が大好きなんです!」という爽快な展開ですよね?」
おみっちゃんの願望。
「素直に助けに行けよ。それにコンサートの依頼ならマネージャーの私とコンサート料の話をつけてもらわないと困るね。イヒッ!」
守銭奴な女将さん。
「困っている村人よりお金を優先するなんて!? さすが女将さんですね! エヘッ!」
強いモノには下手に出る。それがエヘ幽霊だ。
「ていうか、元々、おみっちゃん事態が正義のヒーローではない。」
おみっちゃんは幽霊である。
「そうです。私は江戸で歌姫になりたい、ただの地縛霊ですからね。エヘッ!」
どんな説明も可愛い子ぶるエヘ幽霊。
「じゃあ、どういう展開にすればいいんですか?」
おみっちゃんの素朴な疑問。
「例えば、歌姫になりたければ神様に善行を積めと言われたとか?」
女将さんの分かりやすいたとえ話。
「そもそも魔界の国盗り物語をやる予定だったような。」
おみっちゃん原点に戻る。
「でもこれ、今回もナメクジ・ドラゴンが出てくるだろうから、そいつをおみっちゃんが歌を歌って倒したら、めでたしめでたしで1話が終わりだろ。もう同じことの繰り返しのテンプレート化してきた。」
女将さんもお手上げ状態。
「物語を作るって難しいですね。エヘッ!」
うつ病になるエヘ幽霊。
「今じゃ新しい茶店のお茶とお団子を創作するのが面白いくらいだもんね。スライムドラゴンを倒したら、青いスライム団子。青いスライム茶。ゴブリン・ドラゴンを倒したらゴ・プリンに、ゴブリン茶。」
新しいものを生み出すのは面白い。
「今回のナメクジ・ドラゴンを倒したら何ができますかね?」
おみちゃんの素朴な疑問。
「茶店の新名物、塩で溶けるネバネバ団子に、とろみのあるドロドロ茶かね? あと茶店のなめくじ引きなんかも腐女子にはウケるだろうね。イヒッ!」
貪欲に儲けるアイデアを生み出す女将さん。
「こうなったら奥の手としてロボット化しますか? 私なら幽霊ロボ、怨霊ロボ、悪霊ロボとかですかね?」
異世界ファンタジーのロボット化である。
「ファントム・ナイト化の時と似てきたね。ファントム・ロボでパイロットがおみっちゃんかい。そのノリでいくとバハムート・ロボのパイロットはバハで、酒呑童子ロボのパイロットは酒呑童子かい?」
新しいロボットを生み出していく茶店の驚異のメカニズム。
「でも、この話って茶店の歌姫だよね?」
出た! そもそも論!
「私がやるんなら何でもいいんじゃないですか? エヘッ!」
たまに正論を言うエヘ幽霊。
「1話が5000字だと20話で終われるんだけど、逃げ場がないね。だからこうしてダラダラと創作して文字数を稼がないといけないんだよ。1話3000字位にパワーダウンしたら楽だね。」
女将さんの編集力。
「ここから戦闘シーンになるから1話が長くなるんですよね。」
おみっちゃんも困惑中。
「助けて! おみっちゃん!」
そん時、メグが慌ててやって来た。
「ほら、きた。」
女将さんもおみっちゃんも予想通りの展開である。
「どうしたの?」
おみっちゃんは尋ねてみた。
「ナメクジ国もドラゴン国に魂を売り渡していたんだ! モモモ先輩もやられちゃった!」
お馴染みの展開。
「なんですって!?」
驚く演技も板についてきたおみっちゃん。
「女将さん! 私、ナメクジ国に行ってきます!」
「おみっちゃん! 気を付けていくんだよ!」
こうしておみっちゃんはナメクジ国に旅立った。
「さあ。メグ。お食べ。美味しいお茶とお団子だよ。」
女将さんはメグにお茶とお団子を食べさせる。
「美味しい! 元気100%!」
メグは生き返った。
「後はおみっちゃんに任せよう。」
「はい。」
女将さんとメグはおみっちゃんを信じていた。
「ギャアアアアアアー!」
「助けて! お母さん!」
ここはナメクジの国。
「死ぬがいい! 魔女っ子たちよ!」
ナメクジ・ドラゴンが猛威を振るっている。
「ちょっと待った!」
その時、一人の幽霊が現れる。
「何者だ?」
ナメクジ・ドラゴンは尋ねてみた。
「私の名前はおみっちゃん! 夢は江戸で歌姫になることです! エヘッ!」
自己紹介する礼儀正しいエヘ幽霊。
「待ってました! おみっちゃん!」
瀕死のサリーとアッコはおみっちゃんの登場に花を添える。
「あなたですね! 私の歌が聞きたいのわ!」
おみっちゃんは自分がコンサートのために呼ばれたと勘違いしている。
「え? 呼んでませんけど?」
ナメクジ・ドラゴンは耳を疑う。
「まあまあ、遠慮しないで下さい。私の歌が聞けるなんてあなたは幸せ者ですね! エヘッ!」
未来の歌姫の歌が聞けるナメクジ・ドラゴンはラッキー!
「1番! おみっちゃん歌います! 曲は五里霧中!」
おみっちゃんが歌い始める。
「耳栓用意!」
魔女っ子たちは耳栓をする。
「ガガガガガガガガッガガガガガアッガガガガガガガガガガガガガッガガガガガガ! ガガガガガガガガッガガガガガアッガガガガガガガガガガガガガッガガガガガガ! ガガガガガガガガッガガガガガアッガガガガガガガガガガガガガッガガガガガガ!」
おみっちゃんは極度の音痴でデスボイスの持ち主であった。
「死ぬ!? 死ぬ!? なんだ!? この歌声は!?」
ナメクジ・ドラゴンは藻掻き苦しむ。
「ガガガガガガガガッガガガガガアッガガガガガガガガガガガガガッガガガガガガ! ガガガガガガガガッガガガガガアッガガガガガガガガガガガガガッガガガガガガ! ガガガガガガガガッガガガガガアッガガガガガガガガガガガガガッガガガガガガ!」
更におみっちゃんは気持ち良く歌を歌い続ける。
「ウギャアアアアアー!」
ゴブリン・ドラゴンは絶命した。
「ご清聴ありがとうございました! ああ~気持ち良かった! エヘッ!」
満足感でいっぱいのエヘ幽霊。
「あれ? 誰もいない? もっとゴブリンさんに聞いてもらいたいな! エヘッ!」
ゴブリンの国に侵攻を始めたエヘ幽霊。
「立て! アッコ! 早くここから逃げるんだ!」
「おお! なんとしても生き延びねば!」
魔女っ子たちは命かながら魔女の国を目指した。
「ゴブリン国の皆さん! 私の歌を聞いてください! エヘッ!」
その後、ゴブリン国からゴブリンがいなくなった。
「あんたは大怪獣ゴジラかね?」
後日、女将さんは苦笑いをする。
「いいえ。私はおみっちゃんですよ。カワイイ幽霊です。エヘッ!」
いつも明るく笑顔で元気に前向きなエヘ幽霊であった。
つづく。
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