第11話 エヘッ! 11

「やって来ました! 目の黒!」

 時代劇の住所は独特らしいと思うおみっちゃん。

「おみっちゃん。茶店の準備を始めるよ。ガッポリ稼ぐんだからね。銭の香りがするよ。イヒッ!」

 守銭奴な女将さん。

「はい。女将さん。一生懸命がんばります。」

 茶店の看板娘として働くおみっちゃん。

「私の名前はおみっちゃん。私の夢は江戸で歌姫になることです!」

 夢を叶えるために少女が悪戦苦闘する物語。


「お腹が空いた・・・・・・。」

 少女はお腹が空いていた。

「食べ物・・・・・・。」

 少女はお金が無かったので食べ物を買うことができなかった。

「何か食べたい・・・・・・。」

 ちなみに仕事もなく、就職口やアルバイト先もないので少女ができることは体を売ってお金を稼ぐか、体を売らないで飢え死にするかのどちらかしか選択肢はなかった。

「お父さん、お母さん、会いたいよ・・・・・・。」

 もちろん少女の両親はいても餓死して死んでるし、両親がいない孤児では貧乏で食べることもできないのも当然である。

「早く死にたいな。死ねばお腹が空かないだろうから・・・・・・。」

 空腹に耐えかねた少女は死にたかった。

「生きていても楽しいことなんかない・・・・・・。」

 少女が生きている希望はなかった。

「ああ・・・・・・死ぬ前に食べたかったな。松茸とクリスマスケーキ。おはぎに、芋ようかん・・・・・・。」

 そう言い残すと少女はバタっと倒れた。

「・・・・・・。」

 少女は動かない。ただの屍のようだ。

「あなたの願いを叶えましょう!」

 そこに神々しい神が現れる。

「生き返って思う存分ご飯を食べなさい! えい!」

 神は少女を生き返らせた。

「おお! 私は生きている! これで好きなものを思いっきり食べれるぞ! 神様! ありがとう!」

 少女は生き返った。

「まずは畑になっているスイカでも食うか。」

 少女は畑にスイカがなっているのを見つけた。

「いただきます!」

 無銭飲食は犯罪です。

「うおおおおお!?」

 しかしスイカは燃えてしまった。

「これはどういうことだ!? これでは何も食べれない!?」

 生き返った少女は食物を食べようとすると食べ物が燃えてしまうのだ。

「神様のバカ野郎!」

 少女は神様を恨んだ。

「これでは永遠の空腹ではないか!?」

 これが妖怪の餓鬼が生まれた悲劇的伝説。

「こうなったら食べ物に触りまくって食事をとる方法をあみだしてやる!」

 そして食べ物を食べようとした餓鬼の少女が食べ物に触れる度に燃えてしまうので、一般大衆の人々には餓鬼が悪さをしている、放火をしているように見えるのであった。

「お腹空いた! 飯を食わせろ!」

 ガッキ―の口癖である。

「バッチリだ。これでも神だもんね。ウフッ!」

 おみっちゃんのデスボイスで歴代の神が死に絶えたので新米の神が魂の救済を行ったために起きた悲劇ともいえる。

「え? 私のそうですか? エヘッ!」

 その通り。全ての責任はエヘ幽霊にあった。


「いらっしゃいませ! 美味しい! 美味しい! お茶とお団子はいかがですか?」

 おみっちゃんは茶店で看板娘を頑張っていた。

「おい、聞いたか。妖怪が出たんだってよ。何でも、お腹空いた。飯食わせろって叫びながら火をつけるらしいぜ。」

「まったく、物騒な世の中だぜ。」

 お客さんの話に聞き耳を立てるおみっちゃん。

「おみっちゃん。ちょっと行って妖怪退治しておいでよ。」 

 女将さんはおみっちゃんに促す。

「はい。じゃあ、行ってきます。エヘッ!」

 いつも明るく笑顔で元気に前向きなエヘ幽霊。


「腹減った! 飯食わせ! 欲しがりません! 勝つまでは!」

 少女は立派な妖怪の餓鬼になっていた。

「クソッ!? りんごを持った瞬間に燃えやがる!? これでは炎の錬金術師ではないか!? やったー!」

 鋼の錬金術師のロイマスタングみたいなもの。

「でも、ご飯が食べれない・・・・・・ガーン!」

 餓鬼はショックを受ける。

「でも食費が掛からなくてラッキーだな。その分、余ったお金でプラモデルを買うんだ! アハッ!」

 たくましく生きる餓鬼。

「よし! 私の能力で人々からお金をガッポリ稼いでやる!」

 餓鬼は発火能力で人々からお金を奪うことを思いついた。

「おい! そこの女の子! お金を出せ!」

 餓鬼は歩いていた女の子に声をかけてしまった。

「違います! 私の名前はおみっちゃんです! 夢は江戸で歌姫になることです!」

 現れたのはおみっちゃんだった。

「え? 誰も名前や夢は聞いていませんが。」

 戸惑う餓鬼。

「あんたね。悪さをしているという妖怪は。」

 おみっちゃんは探していた妖怪を見つけた。

「その通りだ! 私は神に力を頂き、炎の妖怪餓鬼として生き返ったのだ!」

 餓鬼は神の使いを自称する。

「神? 古い神は私が皆殺しにしたから天界に新しい神が発生したんだな。人間にしてやればいいのに、妖怪にするとは未熟な神だ。」

 おみっちゃんは新しい神の能力の低さを悲しんだ。

「クシュン! 誰か私の噂話でもしているのかな? 神はモテモテで困るな。ウヒッ!」

 新しい神の名前はニュー・ゴットでいいだろう。

「でも新しい神の性で妖怪になったんなら私にも責任があるな。デスボイスで殺すのは可愛そうだからやめておこう。」

 意外に責任感のあるおみっちゃん。

「天界の神を皆殺しにして、神の代わりに正しい方向へ導かなければいけない神代行の私の歌声を聞かせてやろう。」

 遂にデスボイスに続く、第2のおみっちゃんの歌声が披露される。

「歌如きで何ができるというのだ! おまえなんか私の地獄の空腹の炎で燃やしてやる! 餓鬼・ファイア!」

 餓鬼は炎でおみっちゃんを攻撃する。

「なに!? なぜ燃えないんだ!? おまえは何者だ!?」

 しかしおみっちゃんは炎では燃えなかった。

「私は既に死んでいる。私はカワイイ幽霊です。エヘッ!」

 いつも明るく笑顔で元気に前向きなエヘ幽霊。

「幽霊だと!? ふざけるな!」

 あり得ないと怒る餓鬼。

「ふざけているのはおまえだ。魔界と天界を滅ぼした私に歯向かったことを後悔させてやる!」

 おみっちゃんは呼吸を整える。

「1番! おみっちゃん歌います! 曲は神の歌!」

 おみっちゃんが歌い出す。

「ララララララララララララララララララララララララララララッララララララララララ! ララララララララララララララララララララララララララララッララララララララララ! ララララララララララララララララララララララララララララッララララララララララ!」

 おみっちゃんは神を皆殺しにして神の歌声のゴットボイスを手に入れていた。

「ウワアアアアア!? なんだ!? この歌声は!? 心の中から邪な気持ちが消えていく!?」

 餓鬼はおみっちゃんの歌声を聞いて苦しみ始めた。

「ララララララララララララララララララララララララララララッララララララララララ! ララララララララララララララララララララララララララララッララララララララララ! ララララララララララララララララララララララララララララッララララララララララ!」

 更におみっちゃんは気持ち良く歌を歌い続ける。

「このままでは良い子になってしまう!? ギャアアアアアアー!」

 餓鬼の体内から邪な気持ちがおみっちゃんの歌声でかき消されていく。

「ご清聴ありがとうございました! ああ~気持ち良かった! エヘッ!」

 大好きな歌を歌い終えて満足なエヘ幽霊。

「あれ? 私は何をしていたんだろう? 以前ほどお腹が減らなくなったような? それに食べ物に触れても火が出ない?」

 餓鬼は邪気がなくなり良い性格になった。

「ガッキ―! あなたの名前はガッキ―よ! 私たちはお友達になったのよ!」

 おみっちゃんは餓鬼にニックネームをつけ、自分とお友達だと言い放つ。

「私はガッキー・・・・・・おみっちゃんのお友達・・・・・・。うん! 私とおみっちゃんはお友達! アハッ!」

 カワイイ名前と友達ができて大喜びのガッキ―。

「ガッキ―、お茶とお団子を食べたくない?」

 悪魔の囁きを始めるおみっちゃん。

「食べたい!」

 涎を垂らすガッキ―。

「なら茶店に行こう! 優しい女将さんもいるよ!」

 恐怖の守銭奴である。

「行く! 行きたい!」

 こうして餓鬼は茶店で強制労働させられることになった。

「私は悪くないもんね。エヘッ!」

 そう。エヘ幽霊はただ歌を歌っているだけだから。恐るべし茶店の歌姫。

 つづく。


 おまけ。

「ゴットボイスか・・・・・・。」

 茶店の歌姫3にして初めてデスボイス以外が出た。

「ふざけて気軽に書いていたから、おみっちゃんは極度の音痴でデスボイスの持ち主なんだよね。」

 デスボイスで皆殺し。面白いじゃん。

「でも一般大衆向けで考えると同人誌レベルなのかな?」

 一般大衆はきれいごとが好き。

「そう考えると、正義が悪を討つとか、困っている人を助けるストーリーの方がいいんだよね。」

 その通り。

「デスボイスだと、人類抹殺計画だけで悪者、ヤンキー、いじめっ子を倒すという意味では良いのだろうけど、それだけでは困っている人は助けられない。」

 ここが一般大衆が共感を得られるか得られないかの差だ。東京の人間は冷たく悪ばかりだとしても、地方の田舎は純粋な子供たちの方が多いだろうからな。結局、勉強できない、大学いけない、就職できない、貧乏、東京から次に行く所がないとかで腐って行くんだろうから。

「困難をデスボイスで突破していくだけではダメなのか。もっと慈愛に満ちたストーリーにしなければ!」

 ゲームで考えると分かりやすいのだが、もうおみっちゃんはドラクエやファイナルファンタジーのような成長型ではないね。北斗の拳、るろうに剣心の様に強い突き進む型か、格闘ゲームにしかならない強さだ。

「開始早々に歌を歌って無双するエヘ幽霊。」

 恐ろしいストラテジーなゲームだ。相手は一歩も動けず。ここまでの無双ゲームは見たことがない。

「歌の種類もデスボイスが皆殺し。ゴットボイスが邪気払い? 神の救済? ラブソングだと愛が叶うのか? 結婚式の安室奈美恵の様におみっちゃんもなれるのか? ポップス。ロック。演歌なんでもできるだろう。」

 世の中は恐ろしいな。人間はなぜ他人を敵としか思わない? 結婚している人たち、そこに愛はあるのか? ただお金のため、生活のために寄生しているだけにしか過ぎない。人間はそうやって生き長らえてきたのだろうか? 愛だの恋だのきれい事ではない気がする。


ピキーン!


 その時、おみっちゃんは閃いた。

「新しい神が頼りないので、おみっちゃんは天界で神になることにした。そこで自分の子供? 分身を茶店に残していく。」

 これで新しい物語が始められるぞ。これは書き直しではない。ワッハッハー!

「やはりおみっちゃんが魔界と天界を統べる者として強くなり過ぎたのが原因だ。」

 インフレ的物語の終了ドラゴンボール風。

「中のプチストーリーを全て省いて、ひたすら戦闘シーンだけでいいのか?」

 う~ん。おみっちゃんを戦闘させると最強で無敵だしな。 


「これは、こうなる。」

 でいいのかな?

「水戸黄門は印籠を出して終わりの物語。」

「アンパンマンはアンパンチで終わりの物語。」

「ドラえもんは秘密道具が壊れて終わりの物語。」

「ドクターXは私失敗しないのでで終わりの物語。」

 などなど。

「そう考えると全ての物語には毎回同じことの繰り返しの形で終わる物語。」

 おみっちゃんもデスボイスで終わりの物語。

「これはこういう物語だと割り切ってしまえばいいのだろうか?」

 これで不安なのは自律神経失調症なのか?

「これは、これで良いのだ!」

 やはり物語にも限界はある。

「幸せ。悲劇。努力。達成する。」

 これの繰り返しが物語の基本である。

「それでいいのか? もっと面白くならないのか?」

 自問自答する。

「いや、毎回つなぎの本編ストーリーか、毎回何らかのプチストーリーがあれば、単なる同じことの繰り返しではなく。きっと面白い物語ができるはずだ!」

 なんだ? 目標? 収集? クエスト? 課題? 単なる同じことの繰り返しではなく、その1話1話に何らかの意味を持たすことができれば、面白い話になるはずだ。

「それはなんだ? 7つの竜の玉? 海賊王? 巨人の駆逐? ジュエルストーン? クリスタル? 究極の料理の食材? それとも新キャラクター? 新アイテム?」

 同じことの繰り返しは1話終わり。これはどこからでも誰でも見やすい。

「続いていく1話終わり。これは途中参加しにくい。」

 難しい。何が正解なんだろう。

「求めるのは面白い物語。」

 それが始まりの動機だったはず。考えろ!? 何かないのか!?

「茶店の歌姫1、コナン、水戸黄門は1話完結型。」

 これはいつでも一般大衆は見始めることができる。

「茶店の歌姫2、ドラゴンボール、ワンピースは1話で完結しない継続型。」

 これは続けて見ないと一般大衆はついていけない。

「う~ん。今思えばどっちも飽きられて視聴率が下がったら打ち切りされてるな。」

 そんなに深く考えることはないのかな?

「こうなってくると、面白い作品かどうか自信があるかないかだけだな。」

 うん。考えるのを止めよう。

「駄作? 同じことの繰り返しで良ければと割り切れば永遠に続けていけるのは実証済み。」

 茶店の歌姫1で実験済み。

「魔王と神になったとしておこう。エヘッ!」

 物語って適当でできていくんだなっと。気にしないで前に進もう。

 つづく。

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