J'accuse・・・!

ヨーロッパ圏には「真実は時の娘」なる格言があるそうです。

「時の娘」という言葉からジョセフィン・テイの名前を思い浮かべたという人は、きっとミステリ好きの方でしょう。

あるいはこの作品で初めて知ったという人、私のことですが、そんなミステリ畑に疎い私のような人でも、話を追うにつれ、このタイトルの秀逸さを肌で感じずにはいられないでしょう。作者さまの気迫がこもった、真に迫る、祈りにも似た、魂揺さぶられる作品でした。

私がカクヨムに登録して幸運だったことのひとつは、偶然にもミステリ好きの人たちと出会えたということでしょうか。

事件、推理、謎解き、犯人探し、真実――。

一見物語の世界だけで完結しそうに思えた小さな謎が、次第に大きなうねりとなって、現実を生きる私たちに切に訴えかけてきます。

「真実は時の娘」という言葉がいまも存在しているということ。それはすなわち、握り潰された真実と、それを追い求めた人たち、そして一人では耐えきれないほどの孤独に寄り添おうとする心優しい人たちが、確かにいたということなのでしょう。

その事実に救われた者の一人として、この作品がこれからも存在し続け、願わくば多くの人に届きますようにと、心から祈っています。

(もちろん、この作品は〝フィクション〟とのことですから批判されるにはあたらないと思いますが、万が一この作品が強制的に非公開にされるような時がきたら、その時は創作の自由について考える時なのかもしれません。一方で、この作品が存在している限り、そこには自由が確かに存在していると言えるのではないでしょうか?)

ミステリ×ジャーナリズムをひとつの作品として昇華させた力強さと優しさをあわせ持つ作品だと思います。ぜひ、ご一読ください。

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