三章 一難去ってもまた一難
3-1
カツンとヒールを打ち鳴らし、本日向かいますのは……城、でございます。
二度目の登城とあって、前回よりは落ち着いていると思うでしょう?
私もそう思いたかったが……そんなこと、あるはずがなかった。
本日の用向きは国王陛下との
あああああ足が
どどんと広くて
ドーム型に作られた高い
悲しいかな、私の残念な
衛兵が敬礼したのを合図に、私もお父様に
ほどなくして続きの間から現れたのは、
先の展開を知る身としてはつかの間の
原作小説では、
「急なことであったろうに、よくぞ参られた。ロータス
「国王陛下におかれましてはご健勝のこととお
「なに、そう
王座には、たおやかな
どことなく二人の
「ふむ、伯爵に似た
……前言
私が
口元にのみ
王座からずいぶんと
背中にじわりと
これが、この国を
……答えいかんでは首が飛ぶな。私だけでなく、
ちらと
おそらく、父にはすでに話が通っているのだろう。知らぬは私のみ、か。
くっ……まだ成人も
トラウマになったらどうしてくれる。
ペニシリンの安定供給には時間を要するだろうし、需要を満たしても乱用すれば
ここで効果実証の
「陛下の治世におかれましては、隣国の
陛下の治世を
「撤回するつもりはないと?」
「ございません」
まっすぐに陛下を
重苦しい
「なるほど。これは、ロータス伯爵が手を焼いているというのもよくわかる」
「
おおお、畏れ入りますじゃないよ。フォロー
この状況、まさかお父様が招いたんじゃないでしょうね。
必死に
「よかろう、ではもう一つの話に移ろう。少し前になるが、ファルスがあわや命を落とすところを、一人のご令嬢に助けられたそうだ。その後の茶会で名乗り出た者がいたのだが……私はその者ではなく、君ではないかと疑っている。合っているかな?」
鷹のような目がすうと細められ、ようやく今日呼ばれた意図を知る。
「なぜ、私だとお思いに?」
「簡単なことだ。ギルベルトは
いっそう増した
もしそのような事態が起こるとすれば、何か特別な理由があったときだということか。
強奪したサインに加えて、統計の授業にも同席してもらっているからね。
ギルベルト殿下が私への協力を
殿下よかったね、陛下からの
今そのせいで私、ピンチですけどね?!
「……殿下は、私の夢に賛同してくださっただけですわ。私にはどなたかの命を救うような力などございません。エレノア嬢がお助けになったと聞いております。疑う余地など」
「そのエレノア嬢が、自分ではないと言っているのだ」
なっ、なにぃ──っ! エレノア嬢、誠実だな……!
いや、この王の前で十代女子が
不敬の
申し訳なさすぎて隣が見られない。こんな
「今はまだ私の胸に秘めているが、いずれファルスの耳にも入ろう。将来を思えば、王太子妃の選定は早い方がいい」
……この口ぶりだと、エレノア嬢はまだ辞退してないってことだよね。
もし私だと認めたら、王太子妃確定……?
それでもって、身を引くヒロインと、行く手を
そんなのぜっったい嫌、断固として
「さようでございましたか。恐れながら陛下、それならば早く他をあたっていただいた方がよいかと」
ふむ、と考えるようなしぐさをとった陛下は、もう一つ
「ファルスを救った方法は、
ぐぅ、と
賢王の名は
この先予定している
私の心の平穏くらい安いものか……でもどこで学んだのかって絶対追及されるよね。
この王からの追及とか、私の胃がもつとは思えないのだが。
…………胃に穴が空いたら、この世界じゃ助からなくね?
「ギルベルトのことを、好いているのか」
「……へあ?」
「し、失礼しました、ええと……」
殿下のことは
本人に言うのも失礼だろうと思うのに、こんなの親に言うことか?
「ご、ご想像にお任せしますわ……」
「あいわかった。ちょうど中庭でギルベルトたちが何やら準備をしている
何がわかったんだ、何の準備だと混乱している間に、陛下の指示で一人の
背は高いが顔立ちから察するに、
黒地に銀糸の細工が
どこかで見たような気もするなあとぼんやり
「………ッ!」
馬車の事故のときに、親を呼びに行かせたあの青年だ!
なんとか声を出すことは
この青年を呼んだのが私の反応を見るためだとすれば、今ので完全にバレたな……。
ちらりと視線を走らせた先で、陛下が笑いを
「ロータス伯爵、
ええ、ええ、そうでしょうとも。
陛下ほど
ここまで必死で
「改めて礼を言おう。我が息子ファルスを救ってくれたこと、心から感謝している」
突然告げられた陛下の言葉に、
「い、いえっ……」
「
「褒美など……特に何もございませんわ……」
さすがにそれは、無理ですよね。もはやここまでか……。
「
抜けかけた
ん? その望み、とは……?
「ファルスの本当の恩人であることを内密にしたいのであろう?」
今まさに考えていた通りの望みを告げられ、
「何やら追及は
朗々と語られる陛下の言葉に
先の騎士のことだけじゃなく、頭の中全部筒抜けってこと……?
「リーゼリット、家に帰ったらベルリッツにポーカーフェイスの特訓を頼もうか。そろそろ必要になる頃だ」
いったいいつから、どこまで
ニコニコと
うう……、その特訓ありがたき、ありがたき!
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