満ちて欠ける月のように、見えなくても確かにそこにある記憶と絆の物語

 高校生の澄花は下校途中でひどい頭痛で動けなくなってしまう。そんな時、手を差し伸べてくれたのは、まるで満月のような丸い銀縁眼鏡をかけた青年。実は彼は不思議な力を持つ眼鏡屋さんだったのです——。

 彼——眼鏡屋の新淵さんの扱う魔法は本当にきらきらしていて、そんな彼にどんどん惹かれていく澄花ちゃんの甘酸っぱい恋心にはもうひたすらきゅんとしてしまうのですが、長い時を生きる新淵さんには彼なりの想いや事情もあり。

 眼鏡屋さんを通して出会った同級生の香坂くんの事情を聞いたことで、澄花ちゃんと新淵さんの関係も少しずつ変化し始めます。やがて新淵さんがとった行動と、それによって明らかになったとある絆の物語に、思わず涙がこぼれてしまいました。

 誰しも助けが必要な時があり、そんな時に出会ってしまうその「偶然」こそを運命と呼ぶんじゃないかな、とそんなふうに思える、切なくも温かい素敵な物語です。

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