人を呪った時、既にその人は自分の墓穴すらも掘っている

 復讐に関する言葉にある「人を呪わば穴二つ」というのが、とてもよく似合う怖さが込められていると感じられました。

 真剣だったからこそ傷つけられたことが許せず、だからこそ周囲が見えなくなり…と坂道を転げ落ちていくように悪い方向へ行ってしまう展開に唸らされます。

 誹謗になってしまうかも知れませんが、読後感は良いとはいえません。しかし私は、その点が長所、特長であると思っています。

 何故ならば復讐だからです。

 お気楽極楽にザマァだなんだという軽々しいものではなく、重く苦しい題材だからこそ、この読後感の良さがない文体にこそテーマを貫く姿勢があると感じています。

 この物語の主人公は、復讐を決意し、呪うと決めた時に、相手の墓穴と一緒に自分の墓穴も掘っていたのだと読み解けました。

 ホラーです。最後の展開、言葉の応酬も、曲げてしまえばコレはホラーではない。冷徹に貫き、描ききる作者の覚悟が、氷でできたカミソリのように首筋に当たるイメージがありました。

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