いわゆる短編集。世界観を少しずつ出す仕事編、お酒+話タイトルの食レポ編、そしてこれが本作が正しくラヴしている――オチ編。
このオチに関しては、まぁ、タイトルを見れば察せられるだろう。有名どころからマイナーまで「愉快な仲間たち」が登場するのは大変満足させられた。
一応最終話まで読んだうえでレビューしているのだが、実にラヴしていた。素晴らしい。グルメが好きな方、ラヴが好きな方、コメが好きな方――には是非とも本作を味わって頂きたいと心から思う。
最後に、そして今更なのだが。なんでラヴ・コメなのか。普通「ラブコメ」なのではないのか。中央の・は何なの。というかラヴしているって何。と思う方、いるかも。
コメ、は説明不要だろう。米のことだ。米とは我ら「人類」の主食であり、つまりは食事の事である。
・、の意味するところはもちろんただ一つ。全ての源でありこれは前の単語が創み出したものを意味する。ラヴ・コメ、とは「ラヴが創み出したものによる食事」という意味だ。
では、ラヴは? そりゃあもちろんかの御大の略であり、つまりラヴk
…………ああ、画面に! 画面に!
ガッシャーン。
主人公は忙しい人で、毎日たちよる癒しの場所をもっている。
全国各地でフランチャイズしているコンビニエンスストアの
目当てはクトゥルフお母さん。どの支店にも遍在して出迎えてくれ
「あら、麓郎ちゃんじゃないの」
クトゥルフお母さんは頭から生えたピンク色の触手をクネクネさせる。
そこで手に入れたクトゥルフグルメに舌鼓をうつ主人公・麓郎さんは
まず絶品の旨さの表現でこちらのお腹をぐうぐうと鳴らしてくる
昼時に見てしまうと舌の根本がきゅうーとするほど美味しそうだ。
その美味からひろがる情景であったりストーリーにもうっとりしていると
そろそろ宇宙的恐怖がやってくる
食した食がこんどは麓郎さんを喰らいかえしてくるのだ。
彼に伴いついつい来店してまうのは
クトゥルフお母さんとの会話をたのしみ
内側から愛されるように喰われ尽くす快楽を味わいに。
クトゥルフの寵愛をうけに、あなたもご来店はいかがでしょうか。
突然ですが皆さんはコンビニご飯を利用されますか?
私はよく利用します。
お仕事が忙しい時期の夕食や夜食、ちょっと慌ただしい出張の時、そして休日のおやつ。
24時間365日、いつでもそこにあるコンビニグルメは私の心強い味方です。
主人公の麓郎さんも、忙しいライターの仕事の合間にしょっちゅうコンビニを利用する一人暮らしの社会人。
わかりますわかります、その気持ち。
帰ったら美味しいものが食べたいけれど作る気力も時間もない。
そんな時は近所のコンビニへ。
コンビニ『ルリエーマート』にはそんな家庭の味に飢えた社会人を癒やす『お母さん食堂』がありますから。
そこにいる『クトゥルフお母さん』はまさに慈母を体現するようなピンクの触手がとっても素敵なみんなのお母さん。
全国の全てのルリエーマートに同時に存在するので取り合いになっちゃう心配もないですね!
そんなクトゥルフお母さんのオススメのコンビニグルメ。麓郎さんの食レポもさすがプロのライターさんだけあって、味や匂いがとてもリアルに伝わってきます。これはすでに飯テロです。
ん?味や匂いだけじゃないですよ。
体の中を何かが這い回り蹂躪される感覚。
魂が宇宙へと引っ張られて行くような感覚。
はい、SAN値チェックのお時間です!?
クトゥルー神話の邪神たちと開通しているコンビニで毎回食事を買い、毎回レビューし、毎回壮絶な死に襲われる短編連作。
ネタの融合だけでも充分すごいのに、真摯なグルメ作品としても一級の食事描写と、毎回レシピに合わせた邪神やその眷属を取合せる豊富な知識で、出落ちやマンネリになることなく、どこから読んでも楽しめる。
エッセイなどでも幅広く深い造詣が垣間見える作者さんならではの教養で、単純にクトゥルー神話の邪神たちの辞典としても高品質な作品だ。
美食と死を混ぜ合わさるクトゥルフお母さんの料理のように、毎回悲惨な結末が待っているとわかりながらリピートしてしまう唯一無二のホラー(?)です
クトゥルフ神話をモチーフにしたホラーグルメ小説です。
主人公は毎回、食堂のお母さんに勧められる料理を堪能し、無残な死を遂げます。しかし、何故か何事もなかったように足繁く食堂に通い続けるという、不条理な世界観が面白いです。
筆力がプロ並みに高く、秀逸なグルメレポートに舌を巻くことでしょう。表現力が豊かなだけにグロテスクな描写も生々しくて、思わず顔を顰めてしまいます。ですが、随所にユーモアを交えていて、苦手な方にも読みやすくなっていると思います。
また本作はクトゥルフ神話のカタログ的な要素もあります。知識はそれほどなくても十分理解して想像することができるし、神話に興味を抱くきっかけにもなります。
公式お墨付きの三つ星グルメホラー、ご賞味あれ!