美しき世界で繰り広げられる異能バトル、人間ドラマ……あと性癖暴露大会!

 本作の舞台は、20世紀初頭イタリアをモデルとした世界に、魔法風味を加えたものとなります。その中心となる水上都市ヴェルナスタの日常風景が巧みな文章力で美しく描かれており、読まれた方はこの街に行ってみたい!と強く感じることでしょう。
 4章構成となっており、すれ違う親子の絆や疫病との闘いなどシリアスな章もあれば、ドタバタギャグの章もありで、いずれの章もとても楽しませてもらえます。ひとまずここで一区切りのようですが、なかなか大きな風呂敷が広げられていますので、第二部以降の公開を楽しみにしたいものです。

 見どころは何と言っても登場人物達の魅力ですが、その素晴らしさを語り尽くすことは難しいです。
 主人公のリヴィオは、初期はほぼ一般市民なので頼りない平凡な少年に見えますが、次第に頼もしい姿が見られるようになります。特に親友レナートを助ける2章での活躍は必見です。
 美女グリゼルダは、いわゆるイマジナリーフレンド(ラバー?)ではあるのですが、ただの妄想の人物とは訳が違います。彼女の秘密は、是非お読みいただいて確認してください。彼女にコロコロと手玉に取られるリヴィオ君を見ていると、ニヤニヤが止まらないことでしょう。
 ロゼッタは普段ぶっきらぼうな物言いをしますが、中身はとても優しく面倒見も良く相当の切れ者であり、後輩のリヴィオをいつも支えてくれる頼もしい先輩です(私のイチオシです)。(外見も中身も)イケメンのジャズアルドとコンビで戦いますが、その炎を主とした戦闘描写はとても美しく、魅せる戦いと言えます。
 他にも、どう見ても痴女だけど意外と義理堅い謎の美女、父との関係に思い悩む親友レナート、食えない上司のアルマンド、気風の良い母ダニエラや船頭のお爺さん、などなど誰も彼も個性的で魅力あふれるキャラ達ばかりとなります。

 皆様もこの素敵なヴェルナスタにどうぞお越しください!

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