(第一部読了時のレビューです)
幼少期に神耶尚斗(かみやなおと)により命を救われた女子高生巫女の桜井美詞(さくらいみこと)は、退魔師兼探偵を営む彼の元へと押しかけて弟子入りを果たす。美詞は師の元で退魔師として様々な怪異事件を解決する中で成長し、やがて彼と共に世界を脅かす巨大な闇へと立ち向かって行く。
【作風】
現代日本をベースとしたローファンタジーであり、陰陽道(陰陽師)・神道(巫女や宮司等)・祓魔(キリスト系エクソシスト)と主に3系統の退魔師が居ますが、それぞれ一長一短あるバランスの取れた世界設定になっています。異能が存在するとはいえ何でもありなファンタジーではなく、根底に確かな理が存在しており、さらにそこへ現実社会の問題も合わさることでリアリティのある物語に仕上がっています。
通常は上記の1系統しか修められない中、尚人は過酷な修行の末に陰陽と祓魔の技を習得した万能選手として大活躍します。さらに、弟子の美詞は神道の超エリートの卵とくれば、二人が組めばもはや敵なし……とはならないのが面白いところで、敵も一筋縄ではいかない曲者が多いため、知恵を振り絞って戦っていくことになります。
そうした戦略・戦術性に富んだバトル、探偵業でのミステリー要素、二人のジレジレ恋愛要素などなど、様々な点から読者を楽しませてくれます。
【キャラの魅力】
ヒロイン兼主人公の女子高生の美詞は、優しく真っ直ぐで努力家な、男女問わず誰からも愛される王道ヒロインです。また彼女はヒロインとして当然のように超絶美少女ですが……実はそれも恵まれている訳ではなく、その生い立ちを知れば複雑な気持ちになるでしょう。
普段人前では毅然とした立ち振舞を見せますが、尚人の前でだけは甘えたところを見せるのが実に可愛らしいものです。押しかけ弟子入りした尚人は大恩人であり、初期は尊敬の気持ちが強いですが、それが次第に恋心に変わっていく様をニヤニヤ見守るのが我々読者のお仕事です。
主人公の尚人は、お家の事情で周囲が敵だらけの中で活動していますが、その逆境にも負けず無茶な努力をした結果、登場時点でほぼ最強の主人公となっています。ただ、その高い退魔戦闘力をもって力技で押すだけならばただのオレツエー主人公ですが、探偵としての的確な状況判断力、数種の退魔の力を組み合わせた臨機応変な戦術など、主に知恵をもって敵を制するところに彼の魅力があると言えます。
弟子の美詞を可愛い妹のように思っており、とにかく過保護で激甘、そこに彼の愛の深さが見てとれるでしょう。初期は妹扱いではあるものの、彼女の押しかけの成果か、非常にゆっくりではあるものの変化していく……まさに王道恋愛でございます。
他にも、恋愛面でお節介焼きな友人達、博識なもふもふワンコ、やたら強い粋な老人、ツンデレライバルなど、二人を取り巻く脇役達も個性的なキャラが多く、物語に色を添えてくれます。
かなりの数のレビューを残してきた私ですが、その中でも本作は最推し作品の一つです。皆様も是非ご一読くださいませ。
物語は何やら不穏なシーンから始まります。
まずはちゃんとこのことを覚えておいていただきたいです。
この後すぐに、学園もののシーンに移りますから、忘れちゃだめですよ。
その学園はかなり特殊な成り立ちと雰囲気を纏っている訳ですが、主人公が朝の支度を終え、登校途中に同級生と出会い、他愛ない会話を交わすうちに到着。
校門の横には学園名を書いた看板、中に吸い込まれていく生徒たち。
そうとは描写されていないのですが、まるでテレビドラマのワンシーンを見ているような感覚になりました。
こんな風にこの作者様、場面描写がとても巧みで、今どこでどんなことが起こっているのかという内容がとても自然に頭に入ってくるのです。
さらにバトルシーンとなると、擬音ばかりが紙面に踊って結局何をしているのかよく分からないようなものも散見されますが、本作は作者様の確かな文章力に裏打ちされて、戦闘の迫力は殺さず、なおその推移をしっかりと描写されています。
そして、私がとても気に入っているのは、この作者様のタイトルのセンスです。
ネタバレにならぬよう、それでも読者に期待を抱かせて、読後に「なるほどね~」と納得感を残してくれる、そんなタイトルばかりなのです。
内容については、いつもながらご自分の目で確かめていただきたいと思います。
作者様も他のレビュアーの方々も触れられている通り、魔を退けたり祓ったりする力を持つ人たちの物語です。
どうか、より多くの人たちの眼に本作が触れることを願って。
最後にひと言。
タグの「男主人公…のはず」で、ちょっと笑ってしまいました(笑)。
本作は先述したように陰陽師で祓魔師(エクソシスト)で探偵という変わった経歴を持つ神耶尚人、彼に恩義がある特殊な出自を持つ女子高生の桜井美詞が主役になります。
一見すると陰陽師と祓魔師という相反する要素ですが、設定がしっかり練られているため齟齬が発生することなく噛み合い、他の作品とは違う大きな要素になっています。特に日本由来の鬼や呪い、西洋由来の悪魔へ通じる力に相性が存在するなどの設定から丁寧さを感じました。
もう1つの要素である探偵業もこれらの要素、調査に使われる道具の数々が物語にリアリティを与えており、構成力もあって非常に読み応えのある物語です!!
ミステリー、陰陽師、祓魔師の要素が好きな方にはおススメの作品です!!
是非一読を!!
事件が発生し、主人公の探偵社に調査依頼が来て、謎を解明しながら解決までしていく…各章はそういった王道ミステリーの流れで進みます。
普通のミステリーの違うのは主人公が陰陽師の家系の退魔師であるということ。人間界の法律に霊界のルールが加わり、物語はよりミステリアスに展開していきます。
その霊界のルールがしっかり構築されていてまずはここが面白い!時には最新技術も導入しながら、人間界の法律と霊界のルールという二重の理を読み解きながら理路整然と解決に導く主人公の手腕は読み応えがあり、解決した際にはスカッとします。
しかし、事件を読み解く中で人間の業の深さやドロドロとした感情が渦巻き、鬱展開となることも……
ですが、主人公をサポートするヒロインの主人公に対する恋心が随所に見え隠れし、そのピュアな想いにフフッと顔を綻ばされ、ドロドロ感を浄化してくれます。
ミステリーの重厚感、キャラクターたちの魅力、異界の怖さとアクションの迫力、どれを取っても一流のエンターテイメント作品だと思います。また、章ごとに物語が独立しているのも読みやすい!
読んで後悔しない一作と自信を持ってお勧めします(^^)/
異能系バトルものかと思いきや、その実は非常に良く練り上げられたストーリーが構築されており、読み手を飽きさせません。
キャラクターたちも魅力的で世界観へ浸るのに時間などかからないことでしょう。
詳しくは実際に読んでいただきたいのですが、本作はエンターテイメントのツボを押さえていると思います。
可愛らしくも強い。もちろん格好いいシーンも目白押しです。特にピンチを脱する爽快感はスカッとすること間違いなし。更には作り込まれた世界観には感嘆の声を上げてしまうほど。本当に五感を刺激する内容となっております。
是非とも読んでいただきたい作品です。
お勧めです!
今作は章毎に構成されている作品です。
一章は「本格異能力学園もの」の体で物語が進んでいきます。緻密に設定や世界観が演出されていてこの一章だけでも充分楽しめるのですが、
実はこれは導入であり、第二章から真の主人公へ物語が引き継がれていきます。
私は特に二章からの「探偵もの」の雰囲気が好きです。
不思議で奇妙な事件に対してシリアスな空気感で挑んでいくのですが、幕間のやりとりや尚人と美詞の兄妹であり、家族であり、師弟である微妙な距離感はどこかコミカルで、重すぎずに楽しめると思います。
ぜひぜひ、私も引き続き物語を追っていきたいと思います。おすすめです!!
物語の初めのころは学園モノなのですが、憧れの男性と再会を果たしてからは探偵モノ風味の事件解決屋稼業となっていきます。
憧れの男性と一緒に、世間を騒がす摩訶不思議な事件に立ち向かっていくわけですね。
退魔師の物語なので、魑魅魍魎と戦うことだってあります。
この魑魅魍魎も、ただ恐ろしくて強い相手ではなく、各章ごとに登場する主要人物たちと関わりがありました。
悪魔や妖怪の類は、人間の心の弱さにつけこんで、よりトラブルを拡大させるのです。
本当に恐ろしいのは魔物ではなく人間の心であると、あらゆる創作物で語られてきたましたが、この物語も例外ではありません。
主人公の女の子自体が、血縁や秘められた能力の関係から、トラブルに巻き込まれやすいため、人間関係で苦労しがちです。
憧れの男性も、過去大きな事件に巻き込まれて、しかも退魔関係者の政治力学に絡んだせいで不名誉な立場に追い込まれています。たとえ実力者であっても、社会的な立場が悪いと正当な評価は受けられないんでしょう。
そんな二人がコンビとなって、いくつもの事件を解決していきます。
そうやって解決する件数が増えるほどに、主人公の女の子がどんどん強くなっていきます。退魔師としても、ひとりの人間としても。
もしかしたら主人公の女の子は、いつか憧れの男性を飛び越えるほど強くなって、憧れの男性の社会的な評価を正当なモノに書き換えるのかもしれません。
そのためには過去の大きな事件の真の解決が必須なので、その瞬間をひとりの読者として楽しみに待とうと思いました。
作品のあらすじからごりごりのバトルかと思っていたのですが、とんでもなく丁寧な導入で惹きこまれます。
導入はハコモノ的な形で学園からスタートするわけですが、学園の描写に絡めた世界観の説明の流れでスムーズなので情報が錯綜しない構成となっています。
まだ私があらすじ内容じたいにも追いついていない状態ですが、どれだけ構成を練ったのかわからないほど、会話や描写の節々に設定が散りばめられており物語を追いかける楽しみが二重に膨れ上がります!
また、シリアス調の展開が中心ですが、主人公を含めたキャラの女子高生全開ガールズトークが挟まるだけで場面が一気に華やかになり、物語の緩急の付け方が絶妙な読みやすさを作り出しています。
主軸が語られていない状態でも気になることが多々出てくるとても欲張りな作品となっています!
これから迎えるであろうあらすじ内容部分の所がどのように描かれるか楽しみに読み進めたいと思います!