戦争という歪んだ争いに巻き込まれた主人公タケキ、そんな彼が持ちうる力は不可視の刃。
戦において己の仲間を守るためにその刃を振るう。
そしてそれは敵対する相手を滅ぼすということ。
この矛盾した行動に苦しみ、悔やみながら戦争が終わった世界で穏やかともいえる日常を送っていた彼にある時起こった出来事で、彼の生活は次第に変わっていきます。
そしてそんな彼を傍で見守り。
いえ、文字通りに『守る』力を持ったヒロインのホトミ、そして彼らの日常を一変させた謎の少女と共に物語は進んで行きます。
何より自分が伝えたいのが文章力の高さです。
戦闘シーンでは緊迫した描写に息をするのも忘れ、対立する人物との会話においては空気がちりちりとひりつくような雰囲気に震え、日常シーンや仲間との穏やかな会話ではそれらとの対比にほっと心安らぎといった具合に読者の心をぐらんぐらんと揺らします。
そう! 正に作者様の掌で読者である我々は踊らされるのです。
さぁ、皆さま。
踊りの後の心地良き興奮に酔いしれる時間を楽しみましょう。
ご縁がありこの物語に出会いました。更新分まで読み終えましたので、レビューさせていただきます。
主人公の彼が雨の中、誰かを殺すところから物語は始まります。それから軍を辞めた彼が、とある事情から戦友と仲間と一緒にある場所へと向かい、そしてそこで驚愕の出会いがあります。色々ご紹介したいのですが、本編を読んでいただきたいので、ストーリーはこの辺りで。
初っ端から重厚な世界観とその描写力に圧倒されます。「カムイ」という特別な力にまつわる文明と、現代に通じる銃火器等の文明が違和感なく共存し、一つの世界を作っています。
合間に挟まれる日常からもそれを感じることができ、風景や生活等にまつわる小物まで丁寧に描かれている為、気がつくとこの世界がどんなものなのかを理解し、そして引き込まれていました。
ストーリー構成もお見事で、出会い、説明、目的、日常、そして戦いと一連の流れに全く違和感がなく、それぞれのパートを楽しむことができました。正直、語彙力のない私では、凄い以外の感想が出てきません。
重厚な現代ファンタジーの世界とその中で動く魅力的なキャラクター達。これを読まないなんてもったいないですよ!
他の皆さまも是非読んでみてください。
カムイという異能、カミガカリという異能者、それが跋扈した過去の戦争ーー。そんな素敵な存在がこの作品では大きな光を放っている。もちろんそれはこの作品の魅力の一つだ。
しかし、僕としてはそれ以外にも、作中に登場した金属製の筒をすこりたい。何故なら、こうした補助技術とそれに即した小物の存在により、カムイというファクションに更なるリアリティが生まれるからだ。
この作品の最大の魅力として、私はリアリティを押したい。人間の心の機微、禍根を残した戦争の記憶、異能とそれに基づく文化。それらが絡み合うことで、この作品の世界は肉感を伴って立ち上がっている。SFなどの非現実を足場にした創作物で、それが出来るのは凄いことである。
良きかな(河の神)
【物語は】
ある一文から始まるのだが、強調の効果を上手く使っている印象。
この物語は緊迫した一場面から始まっている。本編に入るとこの世界の歴史について触れており、そこから現在の国の様子や、人々の様子などを知ることとなる。その後ガラッと雰囲気が変わり、主人公の日常風景が描かれていく。ここで分かって行くのは、主人公の普段の様子と、同僚との関係などについて。とても丁寧であり、分かりやすく、滑らかな文体であると言える。人が体験しそうな事柄について、追って感想を漏らすところや、視線を追うように感じる情景や人物描写はとても自然で、まるで映画を見ているような気分になる。
【物語の魅力】
巧い人にも、いろいろとタイプがある。例えば、話しの展開に繋がりがあり、結果必然性で作られていると感じるタイプ。モチーフの活かし方が秀逸で、メッセージ性を強く感じるタイプ。構成自体が神がかっているタイプ。この物語は、この3タイプとはまた違う巧さを感じる。というよりも、どれもしっくり来ない。流れに無駄がなく、とても巧い。巧過ぎて、『こうだ』と明確にいうのが難しいというのが、近いかも知れない。必要な情報が流れるように読者に与えられていくので、まったくストレスを感じない。言葉にするのが難しい類の巧さという意味合いである。
冒頭に戦うこととなる人物を含まなければ、中途の拝読で主要人物は主人公を含め三人。同僚と上司にあたる人物。それぞれに個性的で、簡単に見分けがつくほど個々性格や言動が違う。しっかりとした世界観、個性的な登場人物。この物語がどう冒頭の場面に繋がっていくのか。そこが現時点では、分からないところが見どころの一つなのかもしれない。3Pあたりからは本題に入っていくのか、含みなどもあり、これから何が起こるのだろうかと、好奇心が刺激されていく。
【登場人物の魅力】
主人公を含む三人は、確かに性格も違い個性もあるのだがチームという感じがする。同じ目的を持ち力を合わせる仲間。信頼関係で結ばれ、絆というものを感じる。もちろん、個人の想いも描かれているのだが不思議なバランスの物語だと感じる。
国の為に犠牲になった彼らの日常。彼らは人でありながら、心を殺さなければならなかった。戦争の真の恐ろしさとはこういうところにあるのかもしれない。この物語の三人は、個々の人物というよりは戦争によって犠牲になった”人間のカタチ”なのかもしれない。
【この物語を通して感じたこと】
あくまでも個人の見解に過ぎないが、戦争が齎す真の恐怖とは何だろうか、という事について考えさせられた。一定年齢に満たない者を戦争の兵器にする理由。彼らがどんなに従順であろうとも最終的には、自国にとっても恐怖の対象になるのではないだろうか?
人は不安から逃れることは出来ない。一度持ってしまえば、相手がどんなに裏切らないと言っても、信じることはない。彼らは生きるために国の犠牲になった。それなのに、自由を奪われる理不尽さ。これは現実世界でも起こっていることであり、決して他人ごとではないはずだ。親が子にしていることも大して変わらない。凄く深いテーマが隠された作品なのではないだろうかと感じた。
この作品を読んであなたはどんなことを考えますか?
恐らく読む方によって感じ方は違うと思われます。
是非あなたもお手に取られてみてくださいね。
SFっぽいけど異世界ファンタジーっぽい、だけども近未来のようであり、むしろ全複合?何処か地球に似た文明も持っている惑星の社会、という雰囲気で読み始めると、世界観がつかみやすいかも……いや違うかな……異世界ファンタジーが近未来SFに浸食された感じ?
こんな風に、人に薦める場合のジャンル説明がとてつもなく難しくて、レビューとしては世界観が表現しにくく、これは読んでもらうしかないな、という作品。とにかく肌で感じろ!という路線です。
キャラクターのダークな過去や経験の設定も、刺さる人が多いはず。
文章のリズムが良く、削ぎ落された鋭敏な文体は読みやすさもあり、スピード感が心地よい。各登場人物と、その相関も魅力的です。
主人公に一本の強い芯があり、全くブレないところ、男が惚れる男という感じ。硬派なタイプだけど、斜に構えているわけでもない。
読んでいて見える色のイメージは、白少な目、黒そこそこ、灰色多め、差し色に赤って感じです。あと夕立の後のアスファルトとか土埃の匂いがする。もはや説明を五感に頼るっていう、レビューまでかつてない書き方をしてしまってますが。そういう空気感でありながら、閉塞感がなく、重すぎない絶妙バランス。
とにかく面白く、埋もれさせてはいけない作品です。
本作ですね、かなり読者を選びます。つまり本作を気に入った読者は「選ばれし読者」です。何だかかっこいいでしょう。
多分ですが、作者はすごく楽しんでる。そうじゃなければ滝行みたいなことをやってる。「俺の遊び(もしくは修行)について来れるかァ」って言われてる感じ。一緒に遊べる人はもう寝食忘れるくらい楽しいと思います。
戦記物、ハイファンタジー、SF、どれとも言えるしどれでもない。
多分カクヨムどころかなろうやライト文芸のノリ、流行、潮流、どれにも媚びることなく自分の世界をこれでもかってくらいに展開している。
悪く言えば自慰。よく言えば先鋭芸術。
どっちと取るかは読者次第。
1話目だけでも読んでみることをおすすめします(こんな言い方失礼かなァ)。本作、かなりの珍味です。読むと世界が広がります。「あ、こんなのありなのか」ってね。