雪が隠した、雪に隠した

雪が滅多に降らない九州。実家に里帰りした主人公翔太は、よく知る街が、まるでシュガーパウダーを纏ったお菓子の街に見える。

わたし自身雪が全く降らない地域で生まれ育ったからよく解るけど、そういう人間からするとものすごくファンタジーで特別なんだよね。雪が降った年のこと、すごく覚えていたりする。

序盤は描写がきれいかつ可愛らしく、雪が持つ特別な舞台を作り出す。

そして雪が解け、むき出しのアスファルトが見える頃―――

そう。翔太、母親、妹、それぞれの言動で見え隠れしていた雪の下の秘密。それが現れる時、わたしはこの作品に心を鷲掴みされた。なんなんこれ、え、超好み。

綺麗な文体とは好対照に、この作品で書かれた登場人物それぞれの気持ちが痛いぐらい伝わる。振り切ってます。

好きって何なんだろうねって思った。

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