雪はすべての汚れを圧し潰し、音もなく降りつづける


 年末に帰省した主人公、翔太。九州の実家は、珍しく積もった雪に、白く埋もれていた。
 滅多に積雪しない地方。ほとんど帰らない実家。顔を合わすのも久しぶりの両親。そして、血のつながらない妹。

 いっけんごく普通の家庭の、ごく普通の年末の風景のように見えます。しかしそこに、血のつながらない妹が帰宅してくることにより、白い雪原になにやら黒いしみのようなものが見えるのです。果たしてそれは雪原の異物なのか。それとも単なる目の中の塵なのか。
 そんな一滴の滲みを塗りつぶしてしまうような、雪の白さが美しいです。大晦日に降り積もる呪詛のような雪と、明けて元日の朝日を受けて輝く祝詞のような雪の対比が見事でした。

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