透き通らない濃い青のような…

 主人公二人といういい方が良いのか、主役とヒロインといういい方が良いのか、兎に角、二人の少女が高校生の時、大人になった時の物語です。

 懐く感情は、尊敬であるとか恋慕であるとか様々な言葉を上げられるのですが、読み終えた今、私にはこれがどうにもしっくりこない言葉ばかりになってしまいます。

 ただ一言で表すならば「情念」という非常に広くて、わかりにくく、想像も容易ではない言葉になってしまいました。

 好きな人を救うために好きな人を傷つける事もあるとか、それで救われる自分もいるとか、言い表そうとしても適当な言葉が見つからないでいました。

 しかしながら、ふと思ったのは物語を通して象徴的に描かれている「海」の色でした。

 まず一番にイメージしたのは青ですが、青ほど見分けがつきにくい色もないという事。マドンナブルー、群青色、マリンブルー、ダックブルー、エジプシャンブルー…と、並べてみれば違いが少し分かる程度で、いきなり見せられて見分けがつくものではない。

 それと同じような差を持った感情が、二人の少女に渦巻いて、それがときおり我が儘や乱暴とも思える二人の行動、言葉に表れているような気がします。

 そして本来、海の色は青だけでなく、夕日に照らされ橙色に染まる事もあれば、翡翠色の海もあり、表面もうねる時もあれば、静まる時もあり、場合に寄れば凍る事もある…そんな広さ、深さ、危うさを詰め込まれた物語だと感じます。

 読む人によっては、酷い感情を持ってしまう事もあるかも知れません。

 でも美しい物語なのです。

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