湿度の高い怪異と乾いたひとたちの静かな奇譚

童話は寒い地域に行くほど残酷になるという。東北の怪異といえば遠野物語も有名だ。
美しい北の情景の中に寒々しい怖さを隠した東北を舞台に、一話完結で語られる怪談はどれもその土地の匂いが漂ってくるほどの情感がある。
ただ怖いだけの怪談でないのは、それに遭遇しながら淡々と対応する叔父と呆れながらついていく甥の乾いた視線がちょうどいいからだと思う。
叔父の一見不謹慎なほどの態度は、得体の知れない怪異に対して、わからないまま放置しておく敬意の形でもあるのかもしれない。

どこから読んでも土地とひと、両方の魅力を感じる奇譚です

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