温もりを求めるあなたへ——そこに“息づく”人々が紡ぎ出す、優しさの物語

  • ★★★ Excellent!!!

不器用だけれど、人を深く思いやれる木こりの青年セイル。
控えめながら芯が強く、好奇心旺盛な王女フィールーン。

セイルに宿る相棒、穏やかでちょっとお茶目な竜の賢者テオギス。
セイルの妹で、活発で機転の利く精霊の隣人、エルシー。
フィールーンに仕える、忠義に厚い堅物近衛騎士リクスン。
旅慣れぬ皆をよく支えてくれる、商人魂全開のタルトト。

これは、そんな彼らの旅の物語。
彼らの目的は、とある事件によって竜人化してしまった姫の“呪い”を解くことと、今世界で起こっている異変について調べること。
一筋縄ではいかない旅だけれど、彼らは支え合い、信じ合いながら、目的地を目指して歩んでいく——

ドラ嘘の魅力は、とにかく「人」です。
出てくる登場人物の一人一人が、それこそちょっとした敵役に至るまで、しっかりと書き分けられていて、過去まで綿密に創り上げられているのがよく伝わってくるんです。
だからこそ一人一人にとても惹かれますし、誰を推しにしようものか悩んでしまうのです。現在私はとんだ浮気者と化してしまっています。笑
私なりに研究したのですが、台詞の使い方がお上手で、キャラクターの人柄がにじみ出る印象的なセリフがたくさんあるゆえではないかなと思っています。

そして、深みのある物語にもぜひ注目していただきたいです。
序盤からしっかり敷かれた伏線、散りばめられていく謎、テンポよく進むストーリー。大変心地好いです。
異世界ファンタジーを読む際、序盤に設定連打でお腹(というより頭?)いっぱいでついていけない……なんてことに陥った経験、ありませんか?
私はよくあるのですけど、ドラ嘘にはそれが全くありません。
物語の中で必要なことは教えてくださいますし、設定を読まされているという感覚が皆無で、気づけば世界について詳しくなっているのです。
決してほのぼのだけの展開ではないんですけど、それでも随所から優しさが感じられて、読後にはいつもほんのりと温かいもので心が満たされています。

他にも、大切な場面ではっとする表現がなされる文章や、細かいところまで作り込まれた世界観など、ここでは語りきれない魅力がたくさんあるドラ嘘。
読んで損は絶対にしないこの物語を、皆さんぜひお読みください!

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