英雄たちを結びつけたのは、悲劇の娘の、誰よりも清澄な心

  • ★★★ Excellent!!!

純粋で、健気で、しかし芯は強い。
運命に翻弄され続けた悲劇の娘は、それでも運命を呪うことなく、どこまでも清い心を持ち続けていた。
どうしても救いたいと思わされる。
そんな娘だからこそ、これほど多くの人物が彼女の力になろうとしたのでしょう。

若くひたむきな騎士従士タオと、聡明な大聖堂付属学校の学徒エリュース。
この二人を筆頭にたくさんの魅力的な登場人物が現れ、各々が各々の動機を持って物語を織りなしていきます。
驚くべきは、一人一人の人物の解像度の高さです。「なぜ」が一つも湧かないほど、各人の背景や人物像が細やかに描写されており、だからこそでしょう、大変なリアリティを感じます。

また、作品の足をしっかりと地につけるだけの知識量、そして文章力をお持ちで、とても丁寧に繊細に物語を書いておられます。
ファンタジーでありながら、今まさに目の前で事件が起こっているかのようなこのリアリティは、書き手である保紫さんのたゆまぬ努力が生み出したものでもありましょう。
本当に楽しめる作品には、リアリティが必要不可欠なのだと改めて感じました。

世界が清濁併せ持つのは、現実でも幻想世界でも同じ。
それを細やかに書き上げたこちらの作品は、心の底まで揺さぶられるような傑作です。
皆さんもタオやエリュースと共に彼女と出会って、彼女を救うために奔走してください。

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