絡み合い、集束していく群像劇

なじみのある近世・近代ではない、歴史考証された中世ヨーロッパが舞台です。ただし、魔術が息づく世界観としてアレンジされています。
そこには村でも町でも、たしかな人々の暮らしがあります。王公貴族、騎士団、そして宗教勢力の争いも。

物語の軸となるのは二人の青年と一人の少女。
この少女は「女性」といった方が正しいのかもしれませんが、彼女の背負うもののせいで姿ははかなげな少女そのものです。その辺りはぜひ読んでいただきたい。
そして彼らを取り巻く人々が多彩であり、ひとりひとりが確固とした人格を持っています。全員が生活の背景を持ち、考え、生きている。
これだけの登場人物が書き分けられ、その行動の結果としての結末へ、破綻なく集束していくのは作者さまの構成力、筆力であると思います。

神のわざとしての不思議と、異端とされる不思議。ある男の遺した呪い。
そんなものを巡って繰り広げられるのが、闘いと権謀術数。若者の成長。したたかな大人たちの舌鋒!

なんとも読みごたえたっぷりで、重厚な雰囲気にひたれる作品でした。

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