第1.8話

「お待たせ。食糧持ってきたよ」

 と言って駆けてくるのは、美雨だった。

 そして、昨日と同じパンを渡し、息を落ち着かせてこう言った。

「さっき盗み聞きした事だけど、本島でも、被害は大きかったらしくて当分の間はこっちまで手が回らないせいで物資が届かないんだって。だからより一層大事に食べてね。だって」

「それってかなりヤバくないですか? ちなみに残っている備蓄はどのぐらいなんです?」

 そう問うのは幸羽。

 しかし、その答えは予想外だった。

「明日で最後。本来はもっと多い備蓄が用意されていたらしいけど、最近、交換時期で処分しちゃったらしい。代理品は納期が遅れて空港のある島にあった」

「あった?」

 何故、過去形。

「それも流されたらしい。例のアレで」

「じゃぁ私達、穂先真っ暗じゃないですか。これからどうするんですか!」

 大きめの声で幸羽が言う。

 その声で目覚めた未来が、驚いたかのように私にくっついてきた。

「みんな、どうしたの?」

 震えた声だった。

「ごめんごめん。未来ちゃん。つい感情が出ちゃって」

「ねぇ。お腹すいた」

 そう言って未来は裾を引っ張る。

「あれ? 聞いてない?」

 呆れ顔で言う幸羽。

「ほら、私の分の半分あげるから我慢して」

 パンを千切って渡す。

「あー佐奈ちゃんも無視した!」

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