第1.1話

 朝から遺体は捜索されて、留置所には複数の遺体があった。

 皆、泥に汚れ、青白く変色していた。

 そこに母や父の姿はない。

「お父さんお母さんある?」

 そう。未来が問う。

「ううん。ない」

 と答える。

 すると。未来は悲しそうな顔を吊るし俯いた。

「私、捜索のボランティアに入りたい」

 そう言ったのは、幸羽だ。

 俯いた顔を上げ幸羽の方を向いた未来。

「危ないからやめてよ?」

 と言って、再び顔を吊るした。

「未来ちゃんがやらなくていいの。私が、やりたいの。私も自分のお母さんが探したいし。誰かの家族を見つけて、人助けをしたいの!」

 そう叫んだ。

 目を丸くするには美雨だ。あれほどに落ち着いた彼女が驚いた表情を見せた。

 しかし、その顔はすぐに萎んだ。

「駄目だよ。幸羽。だって貴女。片方しか腕がないんだよ? 足手纏いになって、下手したら怪我をする。駄目だよ。私だって。探したい。でも。でも。今。私たちができるのは。生きること。過去を惜しんで。両親を亡くした悲しみに溺れる時じゃない。今はだた。生きるだけ」

 そう、震えた声で言う。

「ねぇ知ってる?」

 無くなった腕をさすりながら幸羽が口を開く。

「私も、そう思ったよ。でもこの腕を無くした時もお母さんはいつも一緒にいてくれた。だから。その恩を返したいの。一生をかけても返せない恩かもしれない。だから頑張るんだよ。わかる?」

 美雨はそれに反応するかのように、声を出す。

「わかる。だけど、死んでしまったら元も子もない。だから。危険な事以外で、今を生きようよ。」

「だったら何をすれば良いの?」

 啜り泣く幸羽

「気は早いけど後世に伝える。それは生きる事より重要な事だから。こんなところで泣いてないで、僕たちの居場所に戻ろ?」

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