1.3話

 しかし、やる事がなく、過去を思い出す事ぐらいしかできる事がなかった。

 そう言えば母は、なんと言うかヒステリックな人だったな。などと思う。感情任せにギャーギャー叫いて自分のルールを押し付ける事なんとも思わずやる人間だが、家族には優しく接してくれる総合で見れば良い母だった。

 そういえば幸羽の母親を見た事がないな。



「幸羽! 大丈夫か? どこも痛くないか?」

 目の前に飛び込んできたのは、お父さんだった。

 白い天井に床、ベットに机。病院だった。

 意識が鮮明になるにつれ、喉の渇きがはっきりしてきた。

「お父さん。お水ちょうだい」

「わかった今持ってくる」

 と、部屋の奥にかけて行った。

 戻ってきた父の手にはガラスのコップに入った透明な水。

「ありがとう」

 反射的に「左手」で受け取ろうとする。

 だが、腕が動かない。否。無い。

 何が何だかわからない。

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