第1.4話
指が震える。
無意識に、涙が零れる。
理由は恐怖だ。見知らぬ状態。見知らぬ腕。
何が何だかわからない。
「お父さん。なにこれ。腕が変だよ」
そして思い出した。
「お母さんは? あの日、記憶の最後の日、一緒だったよね?」
「それはな。残念だったよ」
悲しそうな顔をする父
「残念?」
この後、父から事の発端、母の行方を教えてもらう。
どうやら、クリスマスの日、私は、母と一緒に買い物に出かけていた。
そして、爆発事故に巻き込まれ、現在に至る。
母は、別の病院で治療を受けていて、会えないだとと言った。
そして、この話が引き金に触れてはいけない記憶に触れてしまうことになる。
母の行方それは病院じゃない。あの世だ。
確かに、あの夜、私は事故に巻き込まれた。
母は、金属の塊に押しつぶされ、死んだ。
私は同時に、金属は私の腕の骨を折り、引きちぎった。
そう記憶が言っている。
あの日。プロパンガスのタクシーが突っ込んできた。
「お母さん。ケーキ楽しみだね」
「そうね。帰ったら、お父さんと一緒に食べましょうか」
そんな他愛もない話。そんな話に絶望が片足を突っ込んだ。
爆発音。そして炎上した車が、私たちに突っ込んできた。
母は、とっさの判断で私を突き飛ばした。自身の命を犠牲にして。
その後、私の顔を母の鮮血が美しく汚した。
ケーキは、ぐしゃぐしゃになって転がっている。
母も転がっている。
熱くて重い何かが、私の腕にぶつかった。
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