生きるため「静かな水」

生焼け海鵜

エピローグ

 私達は笑っている。しかし、ここがどこでなんのためにいるのかわからない。

 何に対して笑っているのかもわからない。この世に対してなのか、私達が置かれた状況なのか。

 しかし私達は笑っている。

 神に恵まれなかった日々に絶望していた私達とは大違い。今は幸せそうに笑っている。

 この世の中は残酷で、待ち受ける壁は死を意味する。しかしそんな事はとうの昔に分かっている。この世に戦い、この世に敗れた。

 皆同じ。

 いずれ死ぬ。それは今なのか明日なのか数年後なのか、それの違いだけ。

 死とはあやふやな物だ。机上空論に過ぎない。私はそう思っている。無論、世界は違う。

 それでも、生きていると死ぬには確かに大きな違いがある。それがもし矛盾していたとしても、この世はそれを認めるだろう。そんな世界で生きている。

 大きな矛盾を抱えて生きる人間。それがどれだけ愚かなのか、私には到底理解できない。私も人間だからだ。

 偽善。空論。

 皆、大好きだ。

 有言、無実行。

 だが私達は違う。地面を握りしめ必死に生きている。どれだけ絶望に染まり、毒されたとしても、私達は諦めない。片足を折ったとしてもなお、前に進む。

 だが人は幸せが大好きだ。周りの人間すらもなぎ倒し幸せに向かって進む。それが人間。だが、一度、絶望に浸かり失望すると、たちまち動けなくなる。足すらも折っていないのに、動けなくなる。

 私達も、生きる事が幸せと言われれば、それまでだ。

 所詮は私達も偽善と空論の塊だ。

 面白いほどに。

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