第1,9話

 クスクス笑う美雨。

「そんな事はおいておいてだな。もう一つ聞いた事があるんだ。それは、今日、流された街を探索して見つけた食べられそうな食品を回収すると言った事が行われると聞いた」

 と口調を変え、美雨が堂々と喋る。

 息を呑む音が聞こえる。

 それが自分のものなのは、気にしなくてもわかる。

「厳密にどこで行うの?」

 自然に言葉が出てくる。

「船着場、あの元々スーパーのあったあたり。ガレキが少なくて比較的安全らしい」

「私、行きたい」

 目を丸くする三人。

「何を言ってるの? 佐奈ちゃん。危ないよ? もし怪我でもしたら、今の状況だと致命傷に悪化してもおかしくない」

 震えた声で幸羽が言った。

「大丈夫。ガレキが少ないんでしょ? 転けないし辺なものを変に触らないから」

「死体探しよりかはまだ安全だが、やめておいた方がいい」

 と美雨。

「でも、行く」

 連絡船が乗り上げている、あの堤防に行けるのだ。もしかしたら、両親がいるかもしれない。

「なら、仕方ない。参加受付は食糧配給の場所。行っておいで」

「ちょっと、美雨!」

「止めてもきっと行くでしょ? 佐奈?」

 私は頷く。

「ならいってらっしゃい。絶対帰ってきてね」

 泣き顔になった幸羽が手を振る。

 まるで最後のさよならのように。

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