第16話「はろいん☆」

「ねえ河童なにやってんの?」


 ルナはピンクに小さな青い星が無数に散りばめられた星空裏地の、表、真っ白な上等な魔女帽子をかぶり、同じ裏地の膝下丈ひざしたたけほどあるこれまた上等な白いケープ付きマントを学校指定の地味なセーラー服の上に着こんでいた。


「あっ! ルナ! [はろいん]の準備だよ、ゴブリン君に教わったんだ(笑)」


 河童はルナの家の倉で満面の笑みを浮かべ深緑色しんりょくいろのカボチャに「ゴリゴリ」と割り箸を刺していた。


「どゆこと?」

 ルナの疑問は最もだ、四本足のカボチャが何を表してるのかがさっぱりだ。


「カボチャの馬車だよ!」

 …………  河童の答えは予想の斜め上を行っていた。


「それがカボチャの馬車???」

 ルナは思った、足の生えたこのカボチャが馬車?


「そうだよ」

 河童は曇り無き[まなこ]でルナを見つめた。


「ねえ河童、なぜハロウィーンにカボチャの馬車なの?」

 ルナは混乱してそこじゃ無いと思われる質問をしてしまう、問題はハロウィーンにシンデレラ? (許容出来る範囲)ではなく、馬車であるトコロのカボチャに車輪ではなく方なのだ。 


「ゴブリン君が言ってたんだ、[はろいん]は西洋のお盆でカボチャのお祭りなんだって」

 河童はいたって真面目にそう答た、確かにハロウィーンはケルト人の一年の終わり、十月三十一日に死者の霊が家族を訪ねてくるという土着のお祭りに由来し、現在ではカボチャ(ジャック・オー・ランタン)を飾るのが定番だ。


「えーと……お盆イコールキュウリの馬とナスの牛(割り箸刺すやつ)? カボチャ=シンデレラ=カボチャの馬車?? お盆プラスカボチャの馬車=足の生えたカボチャの馬車???」

 ルナは河童のおかしな言動を一つ一つばらして理解しようとするが速攻無理があると思った。


「へへへ~~ん[シンデラ]も知ってるんだ、ルナ、ボクも人間の事分かるようになって来たでしょ」

 河童は自慢げに丸々太った四本足の生き物の様に完成した深緑しんりょくの[カボチャの馬車的な何か]をルナの目の前、倉の床へ「ドヘリ」と置いてみせた。


「げっ( ゚ロ゚)!! キモい!!」

 ルナは馬の足がじかに生えた[シンデラ]とやらの[カボチャの馬車的な何か]がルナの[カワイイの城]こと[倉]を「パカパカ」蠢く姿を想像すると即座に行動した。


「なっ、何!? ルナ止めてよ!!」

 河童のこの叫びは無駄であった、ルナは河童がこしらえたその[カボチャの馬車的な何か]にお婆さんが料理に使う業物わざもの、刀鍛冶が打った名包丁[まな板切り國光くにみつ]をわざわざお台所からける様に持って来て、ザックリ縦に「ストン!」と振り下ろしたのだ。



「ハッピーーハロウィーーーーン!!!!」


 

 まったく幸せを感じさせないルナの叫びと共に河童は目撃した、黄色の果肉ないぞうをさらす真っ二つの[カボチャの馬車的な何か]こと[箸の刺さった深緑のカボチャ]とそれを見おろすハロウィーンに笑う白き魔女の姿を……。





🎃おまけ🎃



「河童、今日はパンプキンプリン食べさせてあげる」


「あっ、ありがとうございます、ルナ

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