想いが積もる。静かに、重く、降り積もる。

不思議な読了感であった。

情景が思い浮かばない訳ではない。寧ろその逆で、雪の白さ、風の冷たさ、飲み屋の暖かさと寒々しさ、その全ては脳裏に浮かんでくる。

けれどそれとは別に、この作品には常に雪がしんしんと降り積もっているような、そんな奇妙な雰囲気があったのだ。音を吸い込んで降り積もり、喜びも悲しみを覆い隠して白く染め上げていくような、そんな寂しさが在ったのだ。

読み終わって目を上げてみれば、世界はだだっ広い雪原だ。人生の何もかもを呑み込んで、時間ばかりが唯唯降り積もっていく。

嗚呼、寂しいなぁ。

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