もう、こりごりだ……。
全てを投げ出し、知らない土地に流れ着いた女。
こんなはずじゃあ……でも、どうやって逃げれば……。
道を外したが、戻ることも身を堕とすこともできない男。
ひょんなことから二人は出会い、惹かれ合っていく。
哀愁漂う厳しい世界で温かい人情に救われながらも、二人が行き着く先は……。
淡々と綴られる物語。それ故、簡潔でありながらも重厚で様々な人物たちの躍動や思い、葛藤が丁寧に描写されます。そして、女性の強さのワケ。ときに男よりも強く、気丈に振る舞う姿はその覚悟の重さに起因するのだと考えさせられる部分が作中、多々登場します。時代や雰囲気が独特で掴みにくい、という抵抗を拭い去るほどの掴みと儚い物語。グッとくるものが、どこかにあるはずです。