万葉集×学園ミステリ
気鋭の高校生作家、詰草(つめくさ)彰人(あきと)が自殺した。詰草の幼なじみの薊(あざみ)はその原因が文芸部内の誹謗中傷によるものだと考え、詰草の友人でラグビー部の亜鳥(あとり)と一緒に詰草を自殺に追いやった犯人を探すことに。亜鳥は詰草のファンで、誹謗中傷の犯人に罪を償わせたいと思っている。薊も詰草が死んだ理由が知りたかった。そのヒントは詰草が書いた遺作『野草結び』にあるようだ。『野草結び』は男女の恋愛を描き文芸コンクールで高い評価を受け賞を獲った詰草の遺作である。そしてその『野草結び』は文芸部のメンバーしか読んだことがない。文芸部のメンバーに聞き込みをする二人。部長の常盤(ときわ)から部内SNSで詰草に対する誹謗中傷が行われていたことを確認するも、副部長の笹隈(ささくま)、部員の緒車(おぐるま)への聞き込みでその誹謗中傷が詰草の自作自演だったことが判明する。詰草の自殺の原因は誹謗中傷ではなかったのだ。行き詰まった二人は詰草の家に行くことにする。詰草の母親が零した言葉で亜鳥は薊が詰草の幼なじみだと知る。そして『野草結び』を書いたのが実は薊であることを言い当てる。薊は常に詰草と互いの文学について対立しており、ある日愚かな賭けをした。それは互いの名前を使ってコンクールに応募すること。薊が受賞したら詰草は筆を折り、詰草が受賞すれば薊は詰草の恋人になる。そんな賭けだった。そして薊は詰草の名で『野草結び』を書き受賞した。二人の賭けは薊の勝ちで終わり、薊は詰草のことがずっと大嫌いだったと告げる。そして詰草は身を投げた。それが真相だった。亜鳥はそれを聞き「失恋で人は死なない」と言い放ち、詰草が死んだ本当の原因を追求することを薊に宣言した。十年後、詰草彰人のペンネームで作家活動をする薊と再開した亜鳥は、詰草の死を振り返り恋が人の命を奪うことがあると認める。そして償う薊に寄り添うのであった。