ロケ地案内(4)

 『月夜の理科部』をお読みいただきありがとうございます。


 ここでは、本作で取り上げたいくつかの話題について、インターネットで行ける〈ロケ地〉をご紹介します。



 ―――― 第23夜「笑顔と涙」 ――――


【量子通信衛星】 https://www.scientificamerican.com/article/china-reaches-new-milestone-in-space-based-quantum-communications/

 量子もつれ状態にある2本のレーザーを月と地球に配信するという設定の架空の人工衛星です。現在までのところ、地球を周る軌道に中国が打ち上げた人工衛星「墨子」での量子通信実験が知られています。これは初歩的ではあるものの、量子暗号鍵配送や量子テレポーテーションと呼ばれる量子通信の基礎実験に成功し、世界から注目を集めています。

 リンク先のScientific Americanの記事にある衛星とのレーザー通信の写真が美しいので、ぜひ御覧ください。



 ―――― 第24夜「優柔と不断」 ――――


【量子テレポーテーション】 https://www.nikkei-science.com/page/magazine/0006/ryoushi.html

 量子データの基本単位である量子ビットは、コピーができないため転送は一苦労です。この「量子テレポーテーション」とは、量子もつれと呼ばれる特殊な状態を介して量子データを送信する方法です。

 テレポーテーションという名前がついていますが、物質を別の場所に瞬間移動させることは。ある場所の量子データを壊し、それが遠くの別の場所で再生されることから、このような名前になっています。いろいろなところで解説を読むことができますが、どれも読めば読むほど不思議な性質です。



 ―――― 第25夜「手と手」 ――――


【宇宙天気予報】 https://swc.nict.go.jp/

 宇宙には雨や雪など、いわゆる天気はありませんが「宇宙天気」とも言うべき自然現象があります。それは、太陽から出てくるX線や紫外線、太陽表面での爆発現象によって発生する高エネルギー粒子線(太陽風)です。リンク先の情報通信研究機構が配信している「宇宙天気予報」では、太陽の状態を常に監視し、太陽フレアや磁気活動などで大きな変化が観測されるとアラートが出るようになっています。宇宙防衛隊、みたいでカッコいい!


【カツカレー】 https://blogs.nasa.gov/commercialcrew/2020/11/15/lunch-time-what-the-astronauts-ate-this-afternoon/

 宇宙飛行士の野口さんは打ち上げ前日に験担ぎでカツカレーを食べるそうです。リンク先のNASAのページには、先日打ち上げられたクルードラゴンの飛行士4名の打ち上げ前のランチが載っています。みなさん好き勝手なものを食べるんですねぇ。厨房は大変そうですね(笑)

 マイク・ホプキンス:NYステーキにフライドポテト、ケイジャンライス

 ビクター・グローバー:ラムチョップにマッシュポテトとサラダ

 シャノン・ウォーカー:ミディアムハンバーガーにサツマイモのフライドポテト、サラダ

 野口聡一:チキンのカレーライスとフライドポテト


【皆既月食】 https://naojcamp.nao.ac.jp/phenomena/20111210/about/index.html

 太陽――地球――月、というように3つの天体が一直線に並んだ時に月食が起こります。これは地球の影の中を月が通過する現象とも言えます。そして太陽からの光が全く届かない「本影」と呼ばれる地球の影に月がすっぽり収まると、皆既月食となります(影の大きさは地球よりも大きいのです)。皆既のときでも、地球の大気によって屈折された光が月を僅かに照らすので、月は真っ黒にはならず赤銅色に輝きます。

 なお、月と地球の軌道にはズレがあるため、満月の時なら必ず月食が起こるわけではありません。しかし、月食が起こるときの月は必ず満月です。



 ―――― 第26夜「子供と大人」 ――――


【レーザーガイド星補償光学】 https://subarutelescope.org/old/Pressrelease/2011/07/06/j_index.html

 レーザーで人工の星を夜空に作り、それを観測することで空気ゆらぎの影響を補正するのがこの「レーザーガイド星補償光学」です。すばる望遠鏡を始め、大型の望遠鏡にはほぼ標準で取り付けられるような、一般的な装備になっているようです。用いられるレーザー光源は様々で、主にオレンジ色のものか、緑色のものが用いられているようです。いずれも、高度100キロメートルほどにあるナトリウム層を発光させてガイド星をつくります。夜空を指すレーザー光。絵になりますね。


【通信の研究所に望遠鏡】 https://www.nict.go.jp/publication/NICT-News/0903/04.html

 情報通信研究機構の「宇宙光通信地上センター」(東京・小金井市)には、レーザー通信用として直径1.5メートルの大型望遠鏡が備え付けられています。天体観測用ではないのですが、建設当時は国内で2番目に大きい望遠鏡だったそうです。レーザー通信をするときには、レーザーの射出にはこの望遠鏡の近くに備え付けられた20センチ望遠鏡を使い、この1.5メートル鏡は衛星から送られてくるレーザーの受信に使うそうです。



 ―――― 第30夜「月夜と理科部」 ――――


【2人同時の月夜】 https://twitter.com/shun_ka_shu_toh/status/1354969293310423044/photo/1

 日本とアメリカ(ロサンゼルス)に別れた2人が、月夜を共有するのはそれほど楽ではありません。まず、時差の関係で2地点が同時に夜になるのは、日本時間の夕方3時間ほどだけ。そして、2地点から同時に月が見えるかどうかは、月と地球との位置関係に依り、片方からしか見えない場合がほとんどです。

 最終話に登場する「2人同時の月夜」は、舞台となっている2032年8月の場合は日本時間で17日から26日までの間しかありません。リンク先のように図を書いてみると分かりますが、これ以外の日は「2箇所から月が見える」「2箇所とも夜」の条件を満たさないのです。

 日の出・日の入、月の出・月の入の時刻の計算には「こよみのページ」(http://koyomi8.com/)を利用しました。未来の時点での月の満ち欠けを計算したり、月食のシミュレーションができたりと、とても充実してます。興味あれば見てみてください。


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月夜の理科部 嶌田あき @haru-natsu-aki-fuyu

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