人想えばこそ許される罪はあるか

 不具の子とそれに纏わる因習を下地にしながら迷信と惨事がリンクしそうなところを描いている。
 主人公はある種の探偵役であるが犯人役となる他の登場人物は誰一人言葉を持たない。一人だけの推理劇に真実の自供はなく、状況証拠が抱かせる不穏だけが最後まで鳴り響いている。
 実際のところお守りの正体や祖母の振舞いに主人公の孫が想像するような不安があったのかは分からない。ただそれによって主人公自身が救われたのではないかといった考えに至る中でテーマとなる信仰が生きてくる。
 神話的要素や神社の存在といった分かりやすい関連項目に目が行きがちだが、主人公の信仰とはまさに手紙の最後を締める一言ではないかと思える。疑いはある。罪の意識も生まれた。それでも確かなものとして信じれるはひとりの人間として受け止めてきた愛だったのではないか。

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