第5話
シャワーを浴びると脱ぎ散らかした服やらを部長が片付けてくれていた。
「すみません…お先にいただきました…」
「ああ」
あれ、なんか全然目線合わせてくれないんですけど…やっぱり俺のこと絶対怒ってますよね。
「部長…その…」
「服はそこにまとめておいたから。着替えたら先に出てくれていいぞ。ここで泊まるのはお前も嫌だろう」
「え」
「ああ、金のことなら気にするな。俺が泊まるから俺が出す」
「は?ちょっと待ってくださいよ」
淡々と話す部長に理解が追いつかない。切り替え早すぎじゃないか。
俺も相手が部長とわかった時にはもう帰ろうと思ったけど、さっきまであんなに…
やっぱり俺への報復とか色々考えてるのではと深く考えてしまう。
「なんだ」
「いや、その…すみませんでした…その…部長にこんなことしてしまって…むしろ一発殴ってください…」
「…ふふっ、お前面白いな。最初お前は帰ろうとしてたのに俺が無理やり襲ったんだ。被害者はお前だろ」
「いや、そんなこと…」
「早くシャワーを浴びたいんだ。やることやったんだから、お前も帰りたいだろ。もういいから帰ってくれ」
ピシャリと言い捨てられて、俺は雷に打たれたみたいにショックを受けていた。これははっきりとした拒絶ではないか。
部長のことは怖いとは思っていたが、いつかこの人のように仕事のできる頼られる上司になりたいと思っていたんだ。
「はい…」
これ以上部長に何を言ってもきっと更に拒絶されるだけだ。大人しく帰ろう。
「朝比奈、」
「は、はい」
「その………よかった」
「は?」
「よかった、気持ちよかったんだ。年甲斐もなくはしゃいで…すまない。軽蔑はしないでおいてやる」
「え」
「じゃあな、気をつけて帰れよ」
「え、ぶちょ、まって」
赤く頬を染めた部長に最後に爆弾を落とされ、シャワー室へと消えていった後ろ姿を追いかけようと思ったが、ここは引いて、後日じっくり攻めようと思った俺であった。
あーー…このまた首をもたげようとしてる愚息をどうしようかと、俺は頭を抱えるのだった。
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