第11話

シャワーを浴びて髪を乾かしながらぼーっと今日のことを考える。

俺が何したってんだ。


「いや、よく考えなくても嫌がられること…したわ………」


めちゃくちゃしてる。主に週末の夜に。

やっぱ怒ってるよな…そりゃ怒るよな。

くたりと洗面所の前に座り込む。

髪を適当に乾かして鞄から徐に名刺を取り出す。


「…上原…優也…ねぇ」



色気のある、しかし笑うと隙があるような人好きのする笑顔を思い出して、俺はスッと目を細め、ぐしゃりと名刺を握りつぶし、ドサっとベッドにダイブした。








「ねぇ、雅己ちゃん。どうしたの、急に」

「…なにが」

「顔が凶悪になってっから…あー…なんか俺、まずったかんじ?ごめんね、乱入しちゃって」

「なにもしてないぞ、お前は…したとしたら、俺だ」

「え?」



そう、俺だ。俺があいつにしたことが物事を拗らせたんだ。

正直まともな恋愛をしてこなかったのにここまで歳を食ってしまった。

隣の上原が不思議そうに、心配そうに見つめているが、こいつにはとても相談できない。

俺のことをいつだって尊敬の目で見てくるから。

そんな純粋な彼の俺のイメージを壊す勇気なんてない、俺は尊敬されるような人間じゃない、ズルイ奴なんだ。


「雅己ちゃん、大丈夫?俺でよかったら相談乗るからさ」

「ふふ、ありがとうな」

「じゃあ今度雅己ちゃんの家で宅飲みね!」

「お前しか飲まないくせに何言ってるんだ」


たわいない話をしてタクシーは夜の街を走って行った。

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