第3話

これはほんとに俺の知ってる清水部長なんでしょうか。


「…んっ、ふぅ…っ」

「…はっ…」


いやめっちゃエロいんですけど。

なし崩しにキスしちゃって俺が押し倒されてる構図には変わりないんだけど、キスだけでこんなエロいの?普段とのギャップ激し過ぎないか。


「おい、朝比奈、こんなときに考え事か」

「い、いえ…っ、すみませ…っ、その、声えろくて…びっくりして…」


うわーーー!!俺、平社員!清水部長、仕事にストイックで鬼厳しい上司!!その相手になに言っちゃってんだ!馬鹿正直かよ俺は!


「…気持ちいいから…その…声、出てしまって…気持ち悪いなら、抑えるが…すまない…っ」

「え」


顔を真っ赤にしながら部長は消え入りそうな声でそう言った。え?なに、これ。可愛すぎるでしょうが。

呆気にとられた俺をみて部長はなにを思ったのか、ハッとした顔をして目を逸らした。なんだその行動。もはや人格が入れ替わったのではと錯覚するレベルで可愛い。

すると部長はベッド側の鏡台の引き出しからローションとゴムを取り出した。


「先程俺は準備を済ませたからな。待たずともやれるぞ」

「えっ、え?まっ、待ってください準備って」

「当然の礼儀だ。お前はこんな時間まで残業を頑張ってたんだからな」

「…部長」


なんだそれ。いろいろと突っ込みどころはあるのだが一度も褒められたことがない俺が、今このシチュエーションで褒められるのはなんだか複雑…といえども清水部長に褒められるのはむず痒く、嬉しい。

ていうか準備、準備て!!俺はタチしかしたことがないが、ソッチ側、ネコの立場の準備、というものがどういうことを指すのかはわかる。俺とするために準備してたのか?いや、そもそも俺が来るってわかってたのか?いや、そんなはずはない。俺は顔出ししてないし、俺と分かってたら部長がここに来てるはずない。

俺以外の誰かのために、…そう思うとなんだか胸がざわつく気がした。その理由がなにかは分からないが。


「て、うわ!ベルト!ちょっと!」

俺が少しトリップしていると、唐突に部長は俺のベルトのバックルに手をかけ、あれよあれよと言う間に俺の下着まで下ろした。いや仕事早いな相変わらず!

先ほどの部長のキスと声を聞いてにわかに硬度を持ちはじめている愚息を、あの部長が冷ややかで、しかし欲を伴った目で見つめる。


ごくり。俺はなぜか唾を飲みこんだ。


「朝比奈、いいものをもってるな。想像以上だ」

「は?…うわ!部長そんなことしなくていいです!やめて!」

俺さっきからおんなじこと言ってないか?狼狽る俺を尻目に部長は躊躇いなく俺のモノを口にくわえたのだ。




「…うっ、くぁ…」

正直に言おう。まじでめちゃくちゃ気持ちいいんですけど。今まで何人か女の子、男にもしてもらったのとは比べ物にならないくらい、気持ちいい。

時折伺うように俺を見上げるその目もたまらない。

やば、…ほんとに…なんなんこの人…怖いよ…

「あさひな、きもひいいか?」

「いやもうしゃべんないで!暴発しますから!ほんとに!勘弁してください!」

俺が必死に耐えてるのにこの人はもう!

目を伏せてその綺麗な指で俺のモノを必死に咥えて…あ、やばい。まじでいきそう。

「まじで…出そうなんでっ、離して…っ、離してください…部長、」

尚も離そうとしない部長。それどころか綺麗な指で俺の裏筋を爪で引っ掻き刺激を与えたのだ。

「…っ、!」

わずかに腹筋に力が入って俺は汚いものをあろうことか上司の口にぶちまけてしまったのだった。


やってしまった…………………上司に、粗相を……


サーっと顔が青くなる。頭の中では辞表、晒し上げ、社会的責任など色々なワードが飛び交う。


「部長!!すいっませっん!!ほんとに、申し訳っ…」

「…ごほっ、濃いな…っ、ほんとに溜まってたのかよ」

あ、また笑った。たまらずティッシュに口のものを吐き出す部長の表情に、俺は目が離せなくなった。


「清水部長…っ」

「あさひ、な、…っ?!」

俺は部長の腕を掴んで引き寄せ、逆にベットに押し倒した。少しびっくりしたような部長に、今度は俺からキスをした。少し口は精液の味が苦く感じられ、自分のものかと思ってゲンナリしたが、部長にそんなことをさせた罪悪感というか…むしろそこまでしてくれた部長に心があったかくなり、興奮した。

部長のスラックスの上から尻の割れ目に指を這わせる。


「部長、俺とそんなにしたかったんですか。ここ、あっさり指入りますね」

「んあ!ちょっ、いきなり…っ、」

「でもここは早くほしい、って言ってるんじゃないですか?」

あえて挑発するように、蕾をくにくにとなぞると、部長は俺を睨んだ。でも顔が真っ赤で、俺には照れてるようにしか見えなかった。


「ね、部長に、いれたいです。お願いします」

「下手だったら一生軽蔑してやる」

「ははっ、一生は勘弁してください。お手柔らかに」

そうして俺は今日初めて心から笑ったのだ。

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