第2話
部長は優雅に椅子に腰掛けているが俺は近くに座るだなんてそんな恐ろしいことはできるはずもなく…
入って少ししたところに鞄を置いて靴も脱げやしなかった。
マジでなに話したらいいのかわからない。部長は長い脚を組んで眉間に皺を寄せて俺を睨んでいる。
なんだよその眼は。俺を取って食おうとしてるのではないか。これはドッキリで、盛大な嫌がらせをしているのか。
「あの…部長ってネコだったんですか」
あーーー!緊張しすぎて話題ミスった!バカか俺は。もうだめだ明日から会社いけない。
というか部長をこんな経緯で関わってしまった時点で俺は社会的に死ぬ。辞めるしか…
「ああそうだ」
いや答えるのかよ!と突っ込みするだけ俺はまだ自我を保てているのかもしれない。
「あの…このことは誰にも言わないので、お互いのためにここは忘れましょう。それが部長にとってもきっといいかと」
「何を言っている。お前もそういうつもりで来たんだろう」
「は」
「今日は金曜でお前も俺も明日は休みだ。なによりホテル代をもう払っている」
俺の精一杯の提案もバッサリ切り捨てた部長は玄関付近で立ちすくんでいる俺の手をぐっと引いて、耳元に口を寄せてこう宣った。
「俺も溜まってるんだ。お前も…そうなんだろう?」
「…ぶ、ぶちょ…っ」
俺より少しばかり背の低い部長は整った顔で俺の目を真っ直ぐ見据えて、そういってクスリと笑った。
え、笑った?あの部長が!凄まじすぎる色気に俺は顔が熱くなった。俺のせいじゃなく、この顔が良すぎる部長のせいだから。断じて俺のせいではない。
「ここでは仕事の立場は忘れていいぞ。不問にしてやる」
「え、ちょっと待ってください、部長本気ですか!」
「俺はいつだって本気だ、仕事もプライベートも」
「さすがにストイックですね、いやそうじゃなく…って!どこ触ってんですか!」
俺も昔剣道をしていて今も少しは鍛えているから力はあると自負しているが、ぐいぐいとベッドへ引っ張りこむ部長の力の強さに勝てない。強引にベッドへ押し倒されると唐突に俺の息子を人質に取られた。
「うるさいぞ。まさかお前、童貞ではないよな?」
「…そんなわけないでしょ。煽ってんですか」
「正解だ。朝比奈であってもさすがにそれは分かるか」
「は、部長、ここまで煽っておいてやっぱナシはないですよ」
いや、俺何言っちゃってるの。まだここなら引き返せるのに。と脳内の俺が会議真っただ中だ。
「俺だってここまで来てお預けは困るからな」
「俺、性欲強いんでついてきてくださいね」
「それは頼もしいな」
いや、ほんとやめろって俺は!バカ野郎!
そんな思いとは裏腹に、わずかに口の端が上がったような部長をみて、なぜか俺は体温が上がるのを感じた。
その言葉を合図に、俺たちはどちらからともなく唇にかみついた。
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