語り尽くせない名作

時々、その作者にしか書けない物語に遭遇することがある。本作もその一つだと思う。
本作はいってしまえばラブコメで、ラブコメといえば「ラブアンドコメディー」なのでエンターテイメントの雰囲気が強いと思われがちだと思う。実際にこの作品もラブコメとしての要素は判断に取り込んでいて、楽しく読める。
そして、その一方で、限りなく人の内面に踏み込んだ、それもリアルな形での、深みがある。
この両立が凄い。楽しませながら、考えさせる、心を動かされる、そんな何かがある。
これを個性と言っていいのだろうか。個性というにはやや浅はかなのかもしれない。もっと深くの、人そのものをこの作品で垣間見た気がする。
会話文が多いが、それで感情を伝えられる技術も凄い。
凄い凄いばかりで怪しまれるかもしれないが、とにかく読んでほしい。読まなければこの作品の良さの全てはわからない(当然だが)。恐らく、読者一人一人感じることがかなり異なる。ハッピーな物語にもバットな物語にもなる。けれどそれ以前に、一話ごとに読んだ人が何か話したくなる良さがある。何かが琴線に触れて、それを語らずにはいられなくなる(それが異論であろうとも)。
是非、読んで欲しい。

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